左側
 左の人差し指に僕が嵌めて居た指輪を見て藥指に嵌めた方が似合ふデザインだとアドバイスしてきた女のコが居た。
 其の指輪はデザインの點だけでは無く、サイズの點でも本當は藥指にこそぴつたりな指輪のだと僕には判つて居た。

 動かす度に痛みが走る左腕の不自然な動きを隱す爲に今日は必要以上に左半身に裝身具を付け、何かに觸れる度に左側を庇つて居た。
 いつも以上に身に付けた裝身具の殆どは思ひ出があるものばかりだつた。僕がおつさんと呼んでゐた誰かに貰つた指輪、僕が見捨てた誰かがくれた首輪、ある人と御揃いの腕輪、そして僕を見捨てた彼の人に貰つた鎖。全てが僕には重たくて、左腕の痛みよりも僕には堪えた。

 陰鬱な事實ばかりが積み重なつてしまふなあ、と苦笑して己の現状を見詰めてゐる。
 せめて此の現状を笑ひ飛ばせてゐる振りくらいしておくよ。
2002年07月09日(火)
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