深くは語りたく無い
 讀唇をほぼ完全に會得した聽覺障害を持つ人物に對して判り易い樣にと常に無く口を大きく開けて話し掛けるのは相手に不快感を齎すと思つてゐた。
 其れは僕が以前一時的に聽覺を失つた際にさうだつたから。僕の爲ではあるのだが馬鹿の樣に口を大きく開けて幼兒に話し掛けるかの如くゆつくり言葉を發する知人に酷く僕は苛付いてゐた。親しく無い知人であればある程其の口の大きさは大きくなる樣だつた。幾ら僕が讀唇が苦手とはいへ其處迄大口開けてゆつくり話さなくても讀み取れたのに彼らは其の話し方を僕の聽力が回復したと判る迄止めなかつた。
 だから、僕は他の人も同じやうに不快を感ずると思つてゐたのだ。
 だが其れは違ふらしい。
 他人は僕では無いし、僕は他の人物と同一では無い。そうは判つてゐたが何故か僕は同じやうに感ずるものだと思ひ込んでゐた。

 僕の話し方は非常に聽覺障害者にも視覺障害者にも不親切な話し方だと障害を持たぬ人に謂はれた。
 何を謂つてゐるのか判つてもらえないと謂はれた。

 僕がした言ひ譯は少し。
 「吃音の癖がある人間は自分の言葉が通じ無いとより焦つて話す傾向があるんですよ。」
 此れだけをはつきり謂ふので精一杯。
2002年11月08日(金)
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