
ひとりごと〜リターンズ〜
不知火
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2001年04月10日(火) ■ |
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面白気な出会い(4) |
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今回は私の出会いではない。
午前の面接が大失敗に終わり、 しかし理由も納得していたので、 むしろすがすがしい気分でいた私は、 午後の個人面談前にモスバーガーで腹ごしらえをしていた。 (何故か最近モスバーガーでの食事が増えている事は近いうち語ろう。)
モスバーガー新大阪店。 三角のテーブルが微妙な配置になっているため、 隣席で食事している客の様子がよくわかる。
何気なく席につき、モスバーガーができるまでの間読みかけの本を開く。 柳美里さんの「フルハウス」である。 が、本の内容は一向に頭に入ってこない。 隣の客の会話が気になってしょうがないのだ。
男女二人連れ、しかしカップルと言う感じではない。 ひとりは24〜25歳会社員男、どうやら新入社員らしい。 いまひとりは40〜50代おばちゃん、多分主婦?
聞いている限り、この会社員と主婦、電車のなかで出会ったらしい。 一体どのような数奇な出会いをしたのかは窺い知れない。 が、どうやらこの奇妙な二人組は人生相談の話題に花を咲かせているらしい。
「手相でそんなこともわかるんですか?」 若い会社員が驚いてみせる。 素直で正直で誠実で実直そうな、 如何にもおばちゃんが好みそうな、ある種の可愛い青年である。
何らかのトラブルに巻き込まれたおばちゃんに手を貸した青年。 お礼におばちゃんが手相を見てあげていた・・・というところか?
おばちゃんはにこにこしながら、 青年の恋人の性格の事や仕事運についても言い当てていく。 そうして人生についての方向性も示していく。
青年は「それさっきも聞いたやん!」と言うようなことでさえも、 一つ一つ「はい。」「はい。」と丁寧に真摯に受け答えしている。 いわゆる聞き上手、というやつだ。
おばちゃんの人生指導もどんどん深くなっていく。 「あなたはまじめで努力家で優しいから、営業としてはきっと伸びるわ。 でも、してもらってばっかりのうちはあかんよ。 人にどんどん何かしてあげよう、してあげようって言う方が伸びるのよ。」 「彼女も仕事頑張る方でしょ? 時間見つけたらできるだけ二人でいい思い出を一杯作りなさいね。 春にはお花見に行ったり夏には海に行ったり、・・・」 「今あなた二人の女性に思われてるわ。 でも浮気は絶対したらだめよ。 そういうのは自分の首をしめることになっていくからね。」
特別な事は何も言っていないようでもある。 だがどれもとても大事なことである。 私の、いや多分回りにいた全ての客の耳はそのテーブルに向いていただろう。 これ見よがしに広げられた私の文庫本は、ずっと同じページが開かれている。
「でも、ほんますごい偶然やねぇ。 今日仕事やめようか言う日に私と会うなんて・・・。」 「でも、お陰で自信つきました。」
そうして二人は席を立つ。 他の客もそれぞれ自分一人の空間へと帰ってくる。 程なく、殆ど読み進めなかった「フルハウス」を鞄にしまいながら立ち上がる私。
店を出るときふと思った。
実は私も誰かと話したかったのではなかったのだろうか。 偶然出会って手相を見てもらって、人生相談をしてもらって・・・。 うん、すごく羨ましかった。
そういえばさっきの青年は誰かに似ている・・・・。
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