彼がオムライスが好きだと聞いて、作ってみる。 鶏肉。玉ねぎ。ご飯。ケチャップ。卵。そしてまたケチャップ。 家にひとりだから、ケチャップでハートマークなんてことはしない。 オムライス、彼はあの子に作ってもらったんだって。 盛り付け上手でも味付け下手なあの子の料理で、唯一おいしかった料理だそう。 彼とあの子が一緒に暮らした、わずか一週間。 でも、彼にとってはこの上なく大切な一週間だってこと、知ってる。 あの子のことがすごく大切なんだってこと、分かる。 だから、私はせめてあの子よりももっともっとおいしいオムライスを作って、思い出を少しずつそぎ落として行く。 それが、私から、彼とあの子への最小で最低のいじわる。
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