2005年11月01日(火)
素敵バイリンガル


あたくしが上京して間もない頃。
大垣からずっと一緒に芝居をしていた、同士・ときが近くにいたこともあり、
あたくしは自分が役者であるにもかかわらず、プライベートではしばらくず〜っと
大垣弁を貫き通した(苦笑)。


昨今、若い女の子たちの間で、方言がブームになっているとのことだけれど、
この土地の方言は、そんな標準語使いの女の子たちに、決して真似されることがないような、
かわいくもなんともない、独特の「粘り気」みたいなものがある。
大学1年次までは、様々な土地から人間が集まっているのもあり、
関西弁あり、名古屋弁あり、広島弁あり、土佐弁あり、栃木なまり、茨城なまり、群馬なまり等々、
関東の中でも様々な言葉の使いようがあるということも垣間見られ、
物凄く面白かったものだけれど、2年次になるとさすがにそういう風潮も激減していった。
そして、そんな中でも、溌剌と大垣弁を使いこなすあたくしは、一種の「バイリンガル」でもあった。


今はもう亡くなった大学の恩師に、実習後、友達と喋っているところを目撃されてこう言われた。


「日野、お前、今でもその言葉のままなのか?」

「あ・・・・はい、すみません。直します。」

「いや、いいんだ。そのままでいけ。そのままがいいんだよ。」

「へ??」

「普段はそのままにしておけ。いいな。」

「はぁ・・・・。」



紛いなりにも「演劇学科」である。
本を渡されれば流暢な標準語が基本、訛っていたら、即、ダメ出しは当たり前。
自分もそうだと思っていたし、元々方言使いの子も、そりゃ必死にお国言葉を封じ込めにかかっていた。
あたくしもさすがに「このままだとマズいなぁ・・・・」と、授業や実習の間は、努めて標準語であったものの
周囲に標準語使いの子がいようとも、プライベートではやっぱり大垣弁だったのだ(笑)。
それがどうだ。
先生自ら、プライベートの言葉に関してはそのままでとのお達しに、あたくしは一瞬面食らった。
・・・・けれど、標準語使いの人たちがいる中、自分だけが少し特別な言葉で話せるというのは、
やっぱり少し気持ちのいいものであった。


東京にいても、こんな素敵バイリンガルライフで以って、あたくしは、
何とか都会に感化されずに、何年もそこでそのままに生活を続けた。
しかし、プライベートではずっと方言だったので、標準語とそれの違いを、アクセント辞典ナシでも
普通に体が反応するようになった。コレは本当に嬉しい誤算であった。
いや、誤算などではないのかもしれない。
あの時、大学の先生が「そのままでいろ」とあたくしに命じたのは、
ひょっとしたらコレが本来の目的だったのかもしれない。
あと、コレは明らかな誤算だったかもしれないけれど、
自分の話す言葉が、意外とや、全く離れた土地ととてもよく似ている場合があるということに
敏感に気づけるようになったこと。
岡山・広島・山口あたりとイントネーションが似ているので、出身地を尋ねてみると、
やはり中国地方出身であった・・・・という、面白い法則を見出す技も身につけてしまった。

大学を卒業してから入った養成所には、酷い訛りで悩んでいる子たちが結構いたりして、
そういう人々の気持ちもすごくよくわかったので、あたくしがマンツーマンで本読み時の
ダメ出し係になったこともあった。
矯正が難しいのは、やはり、京都・東京から、同心円状に考えて遠い土地の人たちだった。
山形の男の子と、宮崎の女の子はそれぞれ、台本を読みこなすという初期段階から難航。
かなり四苦八苦していたのをよく覚えている。




そんな本日。
「マシューTV」に、響鬼こと、細川茂樹氏が出ていた。
彼は、生粋の岐阜人。そして、我が故郷・大垣の名産品である(爆)。
この人が弟と同じ高校に通った経歴を持ち、メンズノンノの専属モデルをやったり、
果ては仮面ライダーにまでのし上がるような、イケメンズ・・・・そんな人が大垣産だなんて、
俄かには信じられないけれども、この番組の名物「なまりインタビュー」で、
彼が、ホンマもんの大垣人であることが、ガッツリと判明してしまった( ̄∇ ̄;)

ここらの方言など、イントネーションさえ気をつければ、何とか標準語に見せかけることくらいまでは可能。
東北や九州・沖縄地方に見られる、独特な言葉というのがあまりない。
強いていうならば、名古屋弁をもう少し田舎臭く、崩した感じになるのである。

「なまりインタビュー」のルール。
普通の格好(黒っぽい服)の人たちに質問をされた時は、方言で受け答えをする。
赤いスーツの人に質問をされた時は、標準語で受け答えをする。
そして、これらインタビュアーたちは、全員、当人のお国言葉で質問を投げかけるという、
国産バイリンガルにとってはなかなか切り替えの難しい、そしてこれほど面白いゲームはない。


「細川さん、岐阜の人やったねぇ。」

「ほうやて、岐阜やて〜♪」

「岐阜のどこやね?」

「俺、大垣なんやて。大垣から来たんやてぇ〜。」

「大垣!! えぇとこやねぇ〜♪」

「えぇとこやよぉ♪」

「大垣、どんなとこやねぇ?」

「(;¬_¬) そ・・・・そうですね。緑が豊かで・・・・水も大変綺麗で・・・・。」

「ほうかね、ほうかね♪」

「学校も大垣かね?」

「当たり前だがね。ケッタでこいで毎日行っとったわ〜。」

「ケッタかね。ほら、えらかったねぇ〜。」

「でぇ〜れぇ〜、えらかったわぁ〜!!」

「喫茶店とかにも行かへんかった?」

「(;¬_¬) は・・・・はい。行っておりました。」

「喫茶店で、何飲むのぉ〜?」

「冷コーとかやね。大概、冷コーやね〜♪」

「え? 喫茶店へもケッタで行ってみえた?」

「ハイ、ケッタ・・・・( ̄□ ̄;)!! ・・・・はい、自転車で(苦笑)」

「大垣のケッタは大変やよねぇ〜」

「えらいよねぇ〜」

「ほんなもん、でぇれぇ〜、えれぇて!!」

「そうや、そうや、あんたんとこの近くに、USAてパチンコやあらせんかったかね?」

「(;¬_¬) はい・・・・ありますよ。」

「それについてはどう思われます?」

「・・・・そう・・・・ですねぇ。大変、明るく煌びやかで栄えた場所だったので、
街路灯の代わりにもなりましたし、便利に・・・・ハイ、使っていました。」


「そのUSA、潰れたって知っとった?」

「え??(顔で「まじ??」)(初耳)」



大垣人としては大爆笑である。
USAが潰れたのは、かなり前で、今は名古屋きっての大型コーヒーチェーン店・コメダが
その跡地に店を構えているわけなんだが、その近辺にご実家があるらしい彼。
あの辺りに実家があるというのは、本当に生粋の大垣人である(爆)。
最後のとどめのあの質問、本人が素でびっくりしていたので、めちゃくちゃ笑えた。

つか、マジでローカルなネタで申し訳ないんだけど、彼、今年の8月の水都祭に
こっちに帰ってきてるんだよねぇ・・・・その時にはもうコメダがオープンしてたはずなんですが(笑)。
コメダがオープンするも何も、アンタがめいっぱい賞賛していたあの煌びやかなネオンの
欠片もなく、建物は全部なくなってたんですけど〜(爆笑)。
本人いわく、「煌びやかで栄えた場所」というのも、額面通りにとってもらっちゃ困るが、
大垣に栄えた場所などあるわけがない(爆)。
確かに、USAの下卑たネオンは、市内有数、きっての明るさを誇っていたかもしれないが、
アレを全国ネットで言ってしまったら、それこそどえらいことになってしまう(笑)。
せめて共立銀行にしとけばよかったね、響鬼(爆)。<それはそれでどうかと思うが。

水都祭の本楽に浴衣で登場したとかいうのを、別番組でちらりと見かけましてね。
おぉ・・・・こんなことなら、大垣三大祭で一番しょぼい(笑)、あの水都祭に行っておけばよかった・・・・
と、奇妙な後悔をする、特撮ファンのあたくし( ̄∇ ̄;)




しかし・・・・。
電波にお国言葉が乗る・・・・というのは、本当に奇妙な感じがする。
多分、地元の人たちは、誇張された方言以外で、どうしてここが訛っているのかを
理解できないポイントが沢山あったと思う。
「赤の人」からの質問には、めちゃくちゃ丁寧な標準語で以って、大方の流れ、
たった4つしかペナルティがつかなかった彼は、本当に大したバイリンガルだと思う。
そして、その他で全て大垣弁を流暢に話していたので、完璧だと思う。
普段彼が話している言葉の端々にその言葉が出ないことを前提に話しているのだけど、
彼は、完全に綺麗な言葉をマスターしている。
だからこそ、彼があんなハンサムな顔をしていながら、決して美しいとはいえない大柿弁を操ることに
些かの違和感を感じるのであった(爆)。

↑今時の人たちはほとんど使わなくなったが(笑)


名古屋(尾張)から、濃尾平野一面(岐阜・三重の一部)にかけて、こういう呼び方をする人がいますが、
35〜40歳以上くらいの人たちが主流で、それ以下の人たちはあんまり使わない。
その代わり、「ケッタ」は老人から子供まで、全世代に通じる。
コレも、名古屋からの流れからきている方言で、別段、岐阜・大垣特別のものではない。
また、会話中「でぇれぇ〜」というのが何度か登場しますが、コレも全世代共通語。
「どえらい」の変化形で、名古屋弁でいうところの「どえりゃあ」が更に訛ったものである。
「でぇれぇ〜」「でってれぇ〜」「でぇら」等、狭い街なのに、地区によってまた使い方が違う。
意味としては「大変」「とても」・・・・今風に言うならば「超」に当たるのがコレである。
あと、「えらい」(笑)。コレも全世代共通語。
男性や老人は特に、更に崩した形「えれぇ」などとして使う。
意味は有名だとは思うが、「疲れる」「しんどい」が主。
その他に「大変な」「面倒くさい」「疲れることが予想される(笑)」など、結構多岐に渡る意味を持つ。


●例えば、バスに乗り遅れて途中まで歩いた場合。

「二駅も歩いてまったが。でぇれ、えらかったわ。」
(停留所2つ分も歩いちゃったよ。超疲れちゃった。)

「ほら、えらかったねぇ」
(まぁ、大変だったわねぇ。)


●例えば、友達を遊びに誘う場合。

「こっちもケッタあるで、●●まで行こうや。」
(自分も自転車に乗ってきているから、●●まで行かない?)

「●●? あそこ出るのに坂あるやん。えらいでやめとこうや。」
(●●? あそこの手前に上り坂があるじゃない。しんどいし面倒くさいからやめようよ。)


●こんな場合も、「えらい」は通用する。

「お母さん、1人でおつかい行ってこれたで〜♪」
(お母さん、1人でおつかい行けたよ〜♪)

「ほらえらかったなぁ♪」
(それは偉いわねぇ♪)



感情の込め方とイントネーション1つで、「えらい」は如何様にも変化する(爆)。
ここを読み解くのが地元民の特性で、
他の土地の人たちにはなかなか真似できないポイントでもあったりする。

↑大垣弁は奥が深いよ(笑)

あさみ


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