人にはクセがある。 なくて七癖とはよく言ったものだ。 俺様にもクセがあるらしい。 それは布団に潜り込むとき、前足で寝床を整えるとか、 じゃれるときに左前足の方を先に出すとか。 そういったことだ。 それがMILETには可笑しいらしい。 失敬な話だ。 自分だって、七癖どころではないほど 沢山の癖を持っているのにも係わらず、だ。 例を挙げるとキリはないが、顕著なのを一つ暴露しよう。 俺様が見ていないと思って、ヤツは油断している。 だが、こっちはじっくり観察しているっていうわけだ。 そのクセとは… 独り言を言うことだ。 それがかなり怪しい。 どうも小説のネタを考えているらしいのだが、黙って 思索すればよいというのに、MILETは口に出さないと考えが まとまらないらしいのだ。 風呂に入っていようと、トイレの中だろうと、はたまた 眠っているときでも… 「このとき先生はあれだから、やっぱりあの時のあれを使うか」 とか 「伊右衛門のところに少女が現れて…いや、女かなぁ」 とか。 ぶつぶつ呟いているのだ。 ひとりごとに夢中になると、何も手に付かなくなる。 それも困ったものだ。 それが、毎日頻繁なのだ。 本人は無意識らしい。 …だから、友達が少ないのだろうか。 MILETの相方は知らないらしいが…あの男も鈍感なものだ。
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