彼氏とはぷらぷらと歩くデートが多い。 帰りがけ、わざと電車に乗らずに何駅か歩いたり、 地元の駅のまわりで朝の散歩をしたり。 目的はないんだけれど、それもいいなぁって思える。 夜も朝も静かで、ふたりの存在が際立つ感じがするし、 つないだ手はいつでもあったかい。 前を向いて歩く彼の横顔を盗み見たりもして。 たまに話しながらケンカになって、 走ったり追いかけたりもするけど、 並んで歩くというだけで、なんだか最近は満足できる。 同じものを同じ時に見ていることが大切だって感じたから。
ふたつ年上のバイト先のお姉さん、武内さん。 富永愛似のクールビューティーな外見とうらはらに、 話し方や声がかわいくて、やさしい彼女が私は好きだ。 今まで気づかなかったけれど、 バイト先の階段の脇には観葉植物があるみたいだ。 それに気づかせてくれたのは武内さん。 閉店作業をしているときに、 彼女がペットボトルにくんだ水を鉢植えにあげていたから。 それを見て、また「やさしいなぁ」って思って、ドキドキしてしまった。 誰も鉢植えに水をあげていることなんてなかったし、 だいたい、私はその存在に気づいてすらいなかったくらいだ。 本をきれいに並べることだけにやっきになっていた自分が恥ずかしい。
4月から一人暮らしをはじめた友だちの新宅にお邪魔させてもらった。 植物のつたがからまった階段を上り、 廊下をいちばん奥まで進むと、彼女の部屋。 プーさんのキーホルダーがついた鍵でドアを開けて、 「どうぞ」と言う彼女は、少し大人っぽくなっていた。 6畳ぐらいの狭い部屋はこぎれいに片付いていた。 真新しいパソコンと、流しの中のまだ洗っていない食器が、 なんだか対照的なものに思えた。 ちょっと前までは同じ制服を着ていて、 ちっちゃくてかわいかった彼女。 今は、しっかりもののお姉さんという感じがした。 毎日学校に行きながら家事をしているせいなんだろうなぁ。 お祝いにあげた「150cmライフ。」を見ながら、 「あー、これ、すっごい分かる!」とはしゃいでいるのを見ると、 ちょっとだけ高校のころに戻ったような気がした。
|
|