ケイケイの映画日記
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2025年05月06日(火) 「異端者の家」




ホラーには定評のある、A24の作品。今作も主演にラブコメの印象の強いヒュー・グラントを据えた、サイコホラーです。各賞にノミネートされたヒューの好演も見どころで、私は楽しめました。監督はスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。

モルモン教の布教に勤しむ、シスターのバーンズ(ソフィー・ハッチャー)とパクストン(クロエ・イースト)。本日は森の中の一軒家に住む、リード(ヒュー・グラント)の所に向かいます。気さくな初老の紳士・リードに迎えられ、中に入る二人。しかし、段々様子が不穏になり、家から出ようとする二人ですが、叶わず。二人はリード宅に監禁されます。

冒頭の様子で、決して心弾んで布教活動に励んでいるのではないと解かる二人。しかし、強盛な宗教心も感じます。思い返すと、ここはポイントだったのかも。

リードは宗教全般について、彼女たちに上から目線で教示します。私なんかは知識が浅く、へーそうなんだと納得しましたが、これが底の浅いものらしく、シスターバーンズにあっさり論破されます。そこで矛先を変え、あの手この手で魔術めいたモノを見せたり、トリッキーな館内を自ら彼女たちが、進路をチョイスしたように誘導。そしてとある「もの」を見せ、「宗教は支配だ」と、宣う。

なんだ、ただの変態じゃん(笑)。リードは高頭脳と豊富な知識は持てど、それを正しく生かせる人格は無く、サイコ野郎なのでした。

年は食っても、相変わらず愛嬌のある笑顔を振りまくヒュー。今回皺が目立つと思いましたが、年齢からくる劣化ではなく、これは多分メイクですね。通常モードだと素敵過ぎて、不気味さが出ないもんな。実はヒューは、オックスフォード大学出身。誰が聞いても、うっそ〜ん、ですよね?一見軽薄でも、前面に出る愛嬌と善良さで、結局はラストは「いい人」で締める役柄が多いです。でも今作は、そのイメージをを逆手に取って、一見知性がいっぱい、でも中身は軽薄な変態男と、今までの彼とは、似て非なるキャラを怪演しています。

シスター二人も好演。ギャーギャー騒ぐ事無く、身に迫る彼女たちの恐怖が、こちらにも迫ってきます。二人とも芯の強さを感じ、容姿が美しいのも好印象です。

「祈る」とは、本来相手を想う美しい行為だと思います。しかし、憎い相手まで祈れるのかというと、私は多分出来ません。その祈りが、奇跡を生んだ瞬間は、少し感動しました。私がこの手のシーンを、ご都合主義とか感じないのは、きっと神の存在を、信じているのでしょう。

あの蝶は、二人のシスターの化身なのかも知れません。迷路のような館内に、何かもう一工夫あり、リードの内面を掘り下げれば、もっと見応えがあったかな、とは思いました。それでも、ただのサイコ物に落ちず、ラストはきちんと神を絡めた事で、品格はアップした気がしました。私は楽しめた作品です。


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