想い出の樹

2003年11月13日(木) 嬉しかったこと

軽度の発達障害児のNちゃん。(小5)
2ヶ月ほどまえにお母さんが教えてくれました。
「最近ピアノの練習をしたがらない。
『じゃ、ピアノやめちゃう?』と言うと、
『うん、やめてもいい。』と答えるんです。」
レッスンでは今までどおり変わらない様子だったので、
それを聞いてびっくり。
そして、もう一度振り返ってみたのです。

考えてみたら、以前ほど「褒める」ってことをしていませんでした。
最近すごく成長を感じていました。理解力が出てきて、
これまで苦労してきたところなどもスイスイできるように・・・。
だから他の子たちと同じようなスタンスのレッスンになってきていたのです。

もう一度、たくさん褒めることからやり直してみよう。
そうあらたに思い直してのレッスン。
Nちゃんは褒められるととてもとても喜びます。
発達障害の子というのは、褒められるという機会が少ないそうです。
他の子にここまで褒めたら、逆に引かれるだろうな・・・
そう思うくらい褒めてあげるのが丁度いい。
そのことに今更ながら気づかされました。

また、導入にはよく気をつけて取り入れている「動き」を、
もう一度取り入れるようにしました。
音楽に合わせて楽器を鳴らしたり、体を揺らしたり・・・。
ピアノの前に座るだけではなく、そこから離れる時間を設けます。
Nちゃんは妹も一緒にピアノを習っているので、
妹と一緒にリトミックをしたり、お母さんと一緒に手拍子で遊んだり・・・。
それからしばらくして、
ピアノに対して前向きなNちゃんが見られるようになってきました。
あぁ、やっぱり褒めるって大切なんだな・・・と実感。

そして今日、とても嬉しいことがありました。
今Nちゃんはブラームスの子守歌を練習しています。
私の演奏に合わせて、お母さんと手を繋ぎ3拍子に合わせて体を揺らしたり、
楽器で合わせたり・・・そんなことをここのところやっていました。
今日のレッスンでも、お母さんと手を繋いで3拍子を感じました。
その後ピアノに合わせて、トライアングルを一拍目で鳴らします。
Nちゃんはプーさんが大好きなので、
えんぴつの頭についているプーさんとお友達なのですが、
そのプーさんを右手に持って、
プーさんと一緒にトライアングルを叩いたり。。。

そんなことをしばらくした後、さっそくピアノへ。
第1音目・・・。
プーさんに聴かせてあげようという気持ち。
この曲好き、という思い。
なんとも言えぬ純粋な音色が聴こえてきたのです。
一音一音丁寧に美しく弾こうという真剣なまなざしと、呼吸。
本当にびっくりしました。涙が出てきそうになりました。

Nちゃんは、リズムにとても強く、ノリノリで弾くことができます。
でも、「歌う」ことになるとこれがなかなか。
音色に対するこだわりも、意味がわからない状態がしばらく続いていました。
それが、ここ半年フレーズの終わりに
しりもちをつかないよう気をつけるようになり、
多少強弱がつけられるようになってきていました。
でも、そこに「心」があったかというと、それもなかなか。
言われたからそうする・・・といった感があったのです。
ただ、以前はそれすらできなかったのが、
最近は自分から気をつけて弾くようになっていたのでした。

そして、今日のこの瞬間。
彼女の音には心がありました。
彼女にしか出せない音、彼女にしか歌えない歌がそこにはあって、
言葉ではあらわせないほど感動しました。
そして、今日Nちゃんは何度も何度もこの曲を弾きたがり、
何度も何度も美しい音で演奏してくれました。
本当に嬉しかった。

こんな美しい音、美しい歌に出会えるってなかなかないです。
プロの演奏会に行っても、なかなか出会えない音、なかなか出会えない歌。
人の心を打つ演奏。心の琴線に触れる演奏。
Nちゃんはそんなすてきな演奏を聴かせてくれたのでした。

Nちゃんのこの感性と、音楽への愛情を大切に大切に、
初心を忘れずに、レッスンしていこう。そう思わせられました。
Nちゃん、素敵な素敵な1日をどうもありがとう♪


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中嶋 [HOMEPAGE]

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