オミズの花道
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『ビジネスとして成立させるにはリスクも背負わねばならぬ』
2003年03月10日(月)
出勤したら私担当の黒服君が辞めていた。
びっくりしたぞ、おい。
どうやらオーナーママとモメたらしいんだよね。
黒服君のお客様の席で、ママが店の愚痴や女の子の愚痴を言ったとか言わないとか。
誰とモメようが結構なんだが、そんな原因で辞めると云うのは責任感薄いねぇ。
常務も背中が淋しそう。目を掛けていただけに気落ちって所かしら。
あの子いくつだっけ・・・・・・って、私より年上じゃん!
いいのかねえ、イイトシしてそんな事でさ。
まあこの業界の男なんて我慢の効かない奴は多いわな。
女性となればもうひとつこういうパターンは多いのだが。
大体なんでモメるのかね?
確かにどこのオーナーも性格はひん曲がってるもので当たり前なのだけれど。
そんな事でモメたり悩んだりする必要なんて何処にあるのか。
テーブルでそれを上手く丸めて折り合いを付けるのも接客の一つであるのにな。
自分のお客様なんだし、自分の席なんだし、どうにでもなるじゃん。
炸裂させたのは自分のテクニックの無さと何故考えれぬか。
考えれる奴ならこうはならんか。(生理中につき、引き続き狂暴なり)
事実オーナーママは、私のお客様には異様に優しい。
気風の良いお客様につられるのか、この界隈でも三大ケチママに挙げられているにも関わらず(ごめんねママ)、ワインをタダで抜いてくれたり、お土産も大サービスだったりするのだ。
私個人には厳しいが優しい。信頼があるのかVIPクラスの店口座のお客様を、すんなりと私の口座(=売り上げ)に回してくれたりする。
信じられないことに、口座責任は店側なのに売り上げが付くのは私なのだ。
いいのか、こんなの。日給も上げてくれるし、いい人じゃんか。
つまり私にはスタッフの皆が言うように、そうそう嫌なママだとは思えないんだな。
何とでもやり方があるように思う。
水上さんが上手いんだよ、接客してるみたいじゃん、と、マネージャーや常務には笑われてしまうのだけれど、そうさ外に出たら誰にでも接客さ。
私は不器用なんでね。そんな風にトータルモードに持っていかないとボロが出るんだよ。
自客に背負う責任ってのは、内外両方にあると言うのを皆忘れてるのかも知れない。
接客業とは個々一ではなく、中も外も責を担う事であって、言いたくないことも言い、折り合いを常に取るなんて当たり前なのだ。
一人のお客様だけシッカリ相手するのなんか誰でも出来る事なんである。
会話やあしらい礼儀作法なんて出来て当たり前だし、ひょっとしたら中学生くらいでもマニュアルさえ作ればそこそこ出来てしまう。
暴言では無い。
遊ぶ男性の立場から言うと酒の相手のオネエチャンなんてそんなもんだったりする。
オスってそういう生き物なんだもん。
一人のお客様しか相手出来ないのは、所詮そこまでの奴と値踏みしてくる。
それが同じオスだったら能無し、異性であるメスだったらただの口説きやすいオンナ。
冷たいけれど、それがビジネスだし。
他所の口座なら口説かれやすいオンナでも一向に構わないけれど、自分の顔で来てくれている客にそれじゃ余りにもお粗末よね・・・・。
で、こちらがそこを崩す・・・・つまりただの口説きやすい女から脱却して、ビジネスとして成立させるには、リスクも背負わねばならぬのである。
店にも苦言を述べなければならないし、オーナーにも理を通さねばならぬ。
そりゃ『苦言を呈する』なんて、私のような無神経者でも嫌な作業ですが、
でもトラブルを避けて美味しい所ばかりで不満タラタラなんておかしいと思う。
そういう店との駆け引きや折り合いの付け方をお客様はキッチリ見ている。ましてや相手はこのご時世に『飲める身分』の方々なのだ。誤魔化しなど効かぬ。
ビジネスの姿勢を見せなければ、どんな相手だって仕事として認めてくれない。
でなければいつまでも軽い存在扱いされて口説かれてうっとおしいんである。
遊んで面白かったとテーブルレベルで思わせなければ納得した金ではない。
もっと言うなら酒が醒めた後も納得した金でなければならない。
飲み食いの銭ってのは形に残らないだけに始末に負えないのだ。
(奇跡的に未収がゼロなんである。偉いぞワタシ。)
それが出来るホステスは、お客様に可愛がって戴ける。
口説きたいが飲む場所は置いておきたい、仕事の出来る貴重な存在、そんな中途半端な位置だが、フラフラはしているが、軽くは無い位置でもある。
人間の悩みなんて種別は多いだろうが、大きさは似たり寄ったりだ。
皆同じように我慢もしているし、苦しんでいる。
どんな職種でも立場でもそれはそんなに変わるものではない。
嫌な社長だったり上司だったり同僚だったり取引先だったり。
形は変わるが仕事ってのはそんな風に嫌なものだ。それで当たり前だ。
お客様だって日頃から嫌と云うほどそんな我慢はなさっている。
そんな方々から見れば、この仕事はいい加減に思われても致し方無い。
水の概念に振り回されて、甘え優先になりがちなのは、この業界の特色ではあるが、良くない所だなと私も思う。
こんな風に突然辞めたりしてお客様を宙ぶらりんにする。
お客様から言わせると『おろしたボトルはどうなるのか?勿体無い!!』
・・・・が正直な感想だろう。昼間じゃ考えられないね。責任放棄もいいとこ。
それを解っているホステスは、自分の為ではなく客の為に立ち回れる。
お客様の為に忍び難きを耐え、悔し涙に泣き、それでも立ち上がってくる。
そして客はそういうホステス「は」大事にして後腐れの無い他所を口説いて喰う。
(大半の男なんて口説くのが目的なんだからね。)
辛抱が足らん、と古臭い事を言うつもりは無いが、仮にも接客業だと思うなら、黒服君にも今一度思い直して欲しい。
『誰がお給料をくれているのか』
出来たオーナーはよく 『私はお金を回しているだけだ』 という。
私も本当にそう思う。
私達が本当に頭を下げなければならないのはお客様『だけ』なのだ。
そのお客様が居心地いいのなら、立ち回りやすくなるのなら、オーナーであろうが、黒服であろうが、オネエチャンたちであろうが、いやさヘルプちゃんであろうが、レジのオバサンにだって頭を下げるし、仲を取って痛い思いも悔しい思いも辛い思いもしよう。
どんなに辛くても苦しくても私の笑顔をお客様が望むなら、私は笑顔になる。
自分の立場が気まずくなろうが、店側に出来るだけの交渉もしてみせよう。
自分の我儘で店を替わった事は無いが、それでも今まで、『掟破りのボトルごと移動』は何度もこなした。(これが苦しいのだ)
叶わぬお客様には次の店で自腹を切り、オニューをおろした。
それは出来るだけお客様に負担を掛けたくないからだし、次の店に引っ張って行くには良い理由になるからなんだけどね。
綺麗事ではなく、これが一番の保身であることを、年の功で私は知っている。
飛び石とは言え、キャリアの長い私がこれくらいこなせなければ逆に未熟過ぎる。
お客様を鎧に纏い、自分の盾にし、信頼を武器にしたほうがいいのだ。
回りまわって壁の隙間を探して抜けるよりも、壁をぶち壊して進んだ方が、直線距離であるんじゃなかろうかという、単純な脳味噌の成せる技とも言えるが。
もう店には居ないが、元ナンバーワンが私の事を評して、『叩いても叩いても立ち上がってくる娘だわ。』と言っていたらしい。
重役様に、最近だがそう聞かされた。
そうだったのか、嫌な女だなとは思っていたが、叩いて来てたのか。
・・・・あれでか?
善人だな、意外と(笑)。
立ち上がるよ、そんなもん。
だって私を元気付けられるのも、凹ませられるのも、お客様だけなんだもん。
お客様だけ、なんだもんね。
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