オミズの花道
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『 血と涙の牙城 』
2003年09月09日(火)



久しぶりに夜の店でゴタゴタあった!ので書こう・・・・と思ったが。面倒だなあ。

何て言うのだろう、経営者とはあんなものやも知れぬのだ。
と言うかあの図太さが無ければクラブのママなど勤まらないし、店を大きくする事なんて到底出来やしないのだろう。


私は比較的可愛がって貰っているが、この人はどうにも女の子に信が薄い。
オーナーというのはこんなものだ、お人好しで情愛たっぷりのオーナーなどかえって頼りない、・・・・そう思う冷血漢な私でも、時々彼女の言動に冷や水を浴びせられるような気分になる。

身勝手だとか気侭だとか、接客技術が無いとか、マナーが悪いとか、そういう浅い問題ではない。そんなものならこちら次第で何とでもなる。
そういうものではなくて、根本的に・・・・深くて暗く冷たい闇が、彼女の周りを守るように渦巻いているのだ。

例えるなら『その人は理性があって犯罪を犯さないだけで、内面に抱えてるものは猟奇的な犯罪者と同じような冷たいものを持っている』と伝えた方が解りやすいだろうか。


皮肉ではなくあれはあれで立派だとは思う。

目の前の人間に一切感情を持たず、働く女性達を男を運んでくる生贄のように捉え、泣かされる女性達を哀れだとも思わず、己の中に残る一片の情さえ打ち砕くように、修羅のように生きて行く・・・・。

そんな感情は常人には有り得ない。
あの冷たさがこの城を築いた。いや、あの冷たさが無ければ今ここにこの城は建っていないのだろう。

夜の街のオーナーママには多かれ少なかれこういう部分はあるのだが、このママは私のオミズ人生においても、卓越した物を感じる。


うちのママが戦前生まれなのも関係あるかも知れない。
あの時代に女があれで身を立てるのは、大変な事だったのだろうと思う。
ましてや女だてらに持ちビルだもの。それこそ沢山の障害があったろう。

ママがあの仕事で働き出した頃は、この仕事もふしだらだとか何だとか言われて、親兄弟から親戚縁者に至るまで、いっぺんに絶縁されたらしい。

だけどいざママが高度成長期の波に乗り、ミナミに持ちビルを何軒も持つようにまでなった途端、皆踵を返した様に擦り寄って来て、親の借金や幼い弟妹の学費、親戚の墓の費用までママは支払わねばならなかったそうだ。

女がその時代に一人で生きると言うのはどういう事だろう。しかも寡婦の身で子供二人を抱えて、男に興味本位に軽い扱いを受けながら。
どんなに悔しさに泣き暮れる夜があっても、それでも翌日にはお客様の前で、飛びっきりの笑顔で居なければならないのだ。


この世には何があっても変わらない人も居る。
自分がどんな目に遭っても、常に真っ直ぐに自分を律する人は居る。
誰しもがそう在れたら、と己の中に在る強さに誓いはする。

だが、総ての人間がそうなれる訳ではないし、人は己が望むべくして己を建てて行くのだから、建ち方が如何様であろうとも、誰の事も責める事は出来ないし、誰にも責められる謂れはない筈だ。

それならばこの人が今ここにこうして在る事を、責める権利が誰にあると言うのか。


己の中の強さに、誓う事さえ許されなかった時代。
親子三人が生き延びるだけで、精一杯だった時代。
頼るべき者など、文字通り誰一人居ない。



人は誰しも信じるものが無ければ、
愛される幸福が無ければ、
それが常に共になければ、

こんな風に己の周りに、己の血で出来た黒闇に身を漂わせ、
心さえ見えぬ程に強く塗り固めてしまうのだろうか・・・・。
そして冷たく、時には己の身さえ傷つける、
そんな狂気にも似た渦を、身に纏う事になってしまうのだろうか・・・・。

誰しも?





私はこの人が嫌いだ。

素直に泣く事の出来ないくらい、ひどく孤独なこの人が嫌いだ。




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