あふりかくじらノート
あふりかくじら



 眠るときは、きちんと着替えること。

こういうときわたしは、描くことによって
生き延びるしかない。

たとえば今、半透明で濁っていてやわらかくて
それでも蒸し暑くて空気の薄い球体の中にいて、
わたしはそこでもがいていた。
闘っても闘っても、誰かが創り出した、あるいは
自分自身が創り出した重力が身体にのしかかり、
跳躍する脚は、その力を弾力で吸収されていた。

でもほんとうは、外を向いて、ひたすら誰かに
手を差し伸べて救い出される日を待っていた。
この、球体の厚みに、勝つ日を待ち望んでいた。

強がりを言っていたわたしのことばは、
本当は負けそうになっていた弱さとか焦りとか
幼い部分とか、そういうものを吹き消されたかと思うと、
とたんに真実味を増し、強烈に輝きだした。

あの人に会えて、わたしは人生を取り戻した。
ああ、あの生き方!
世界にはこんなにもたくさんの涙がある。
強さや美しさや血や残忍さがある。

生きていかねばならない。
この社会に、自分を問う。
自分が与えられた役割とは何か。

なんて美しい夜景なのだろう。
ほんとに、ヨハネスの夜景もうつくしすぎたけれど。


2002年06月22日(土)
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