無責任賛歌
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| 2004年11月20日(土) |
ワガママも見て見ぬふり/フィリップ・ジャンティ・カンパニー『バニッシング・ポイント』。 |
『ハウルの動く城』が今日から公開。 前作『千と千尋の神隠し』の全国336スクリーンを上回る455スクリーンでの公開は、日本映画としては『踊る大捜査線2』を抜いて最大規模とか。「宮崎駿ブランド」を信頼しての公開なんだろうけれど、これでコケたらおおごとだろうなあ。 でも、ストーリーは破綻しまくり、キャラに命はなくて、殆ど消化不良な出来映えだった『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』にだって客は集まったんだから、もう「宮崎駿監督作」には出来のよしあしに関わらず、客が来るシステムになっちゃってるんだろう。 アニメーターとしてなら『太陽の王子ホルスの大冒険』あたりから、監督としてなら『ルパン三世(第1シリーズ)』から(もっとも放映当時は名前を隠していたが)リアルタイムで付き合ってきた古いファンとしては、宮崎さんが「みんなの宮崎さん」になったからと言って、それでファンをやめてしまうような狭量な態度は取りたくないので、もちろん初日に見に行くつもりで、前売券も買い、朝から行列に並ぶつもりで準備万端整えていたのである。 ところがやっぱりしげが全然起きて来ない(-_-;)。 「二日連続で映画を見にいくのはキツイ」としげが言うので、昨日は映画に行くのを諦めて、早めに寝たのである。なのに、8時間が過ぎ、充分睡眠時間は足りてるだろうに、「きつい。行きたくない。寝る」とワガママこきゃあがるのである。もちろん体調がどうとかなんて理由は全部嘘っぱちに決まっていて、客がたくさん込み合っているところになんぞ行きたくない、というのがホンネだろう。 このしげの「いきなり気が変わる」癖に私はこれまでに何百回も(誇張ではない)振り回されてきているのだが、医者にかかるようになって少しは収まってきたかなあ、と安心しかかっていたこの悪癖が、最近また目立ち始めている。病院でもあまり自分の起こしたトラブルについてきちんと説明はしてないようだし、本気で自分の病気を治す気あるのかと疑わしくもなるのだ。 『ハウル』自体は、早めに見に行きたいことは行きたいのだけれど、別に初日の一番である必要はない(だいたい早めに行きたがるのは、パンフレットを買い損なわないためである)。姑息なウソをついたり、ワガママを押し通そうとしたり、自分の都合で他人を振り回すことに何の痛痒も感じないその卑怯な根性が腹立たしいのだ。 しげの脳天に一発、拳骨を食らわせたくなるが、ここはぐっとガマンをする。ヘタに叱ってヒステリーを起こされたら、今晩予定している山口行き(芝居の鑑賞)まで「もう行かん」とか言い出して中止になりかねない。もう私は、しげの性格を何とかしてやりたいなんて愛情もとうの昔に尽きてしまっているし、そもそもしげにつき合う気力、体力、ともになくなってしまっている。バカ相手に不毛な会話で時間を潰すのはもうたくさんだ。 というわけで、私もフテ寝。一応、夜まで体力が温存できるから、それはそれでいいかな、と気を取りなおすこともできるのだけれど、そう言えばしげはきっと「なんだ。だったら行かなくて正解じゃん」と自分のズルを棚に上げて自己正当化するようなことを言うに決まっているからまた腹が立つのである。お医者さん、このしげの腐れた根性、治してください(+_;)。
結局しげが起きてきたのは3時。出かける寸前である。また14、5時間も寝腐った計算になるが、これで「忙しくてヒマがない」とか「疲れた」とか言ってるのを信用しろと言っても、まるで説得力がないのだ。 博多駅までバス、駅弁を買って新幹線に乗りこむ。 しげは駅弁好きのくせに、卵焼きや唐揚げなんか好きなものだけ食べて、漬け物、酢の物、サバの皮、エビ、煮豆などは食い残して、私に押しつけて来る。こういう好き嫌いを私が一番嫌うと知っていてわざとやるのだから、これはもう、私に怒れと言っているようなものだ。ふきのとうを残していたので、「野菜を残すな。食え」と言って箸でつまんで口元に押しつける。しげは「なんか付いてる」と嫌がったが、それはただの繊維。ウムを言わせず食わせる。 しげの好き嫌いについて私が叱ると、本人はいつも必ず「食べられないわけじゃないよ」と言い訳をするのだが、食べさせないと絶対に食べないのだから、そんなのはウソである。単に嫌いなだけなのに、ウソをついてまで食べようとしないから余計に腹が立つのだが、いくら注意しても好き嫌いを治そうともせず、見え透いたウソを十年以上もつき続けているのだから、しげのこうした性格破綻はもうどうにも治りようがないのかもしれない。 出されたものを美味しく食べられないイヤな性格の人間と同席したって、メシがうまく食べられるはずがない。私はしょっちゅう食事をしながら本を読むのだが、それは「お前と話しながらメシ食ったってうまくない」という意志表示なのである。普通の会席では私は本を読んだりしないのだ(たまにすることもあるが、それはやっぱり嫌いなやつと同席したときである)。しげが本を読んでそっぽ向いてる私に対して怒るのはお門違いである。食事しながら会話してほしけりゃ出されたものはきちんと食え。食えないなら最初から注文するな。
新山口駅で乗り換え、山口線で湯田温泉まで。到着したのは5時過ぎ。ここから会場の広島芸術情報センターまでは3キロほど。芝居の始まる7時までは2時間弱あるので、当初はバスかタクシーを使おうと思っていたのだが、結局、歩いて行くことにする。 温泉街だけあって、道の両端に温泉宿やホテルが立ち並んでいる。しげは公演のパンフレットに使える風景はないかとあちこち写真を撮りまくり。途中の公園で中原中也の句碑があったので、その前でしげの記念写真を撮る。「句碑だけ撮ればいいじゃん」としげは言うのだが、それじゃただの絵葉書だっつーの。記念写真の意味がないじゃん。 あちこちに「足湯」が沸いていて、観光案内図には公衆トイレみたいにあそこここと載っている。概ねどこの足湯も畳一、二畳程度の横長のスペースに東屋風の屋根がついている。吹き抜けになっているところもあればガラス戸で仕切られているところもある。ちょうどくるぶしの上まで浸かる程度のお湯が張ってあって、ここにタダで入れる仕組みになっているのだ。 最近、足が臭いことを気にしているしげ、早速入ってみる。開湯の由来として、その昔、怪我をした白狐が温泉に浸かってその傷を癒していたという伝説があって、どの足湯にも狐の像が祭られている。その狐の像の前でまた記念写真を一枚。残念ながらしげが像の横に並んでも「湯煙温泉と美女」という風情にはまるでならず、狐と狸の呉越同舟、といった塩梅。 しげは熱がっていたが、私にはちょうどいい湯加減であった。観光客以外にも、ご近所さんがしょっちゅう利用しているようで、どこも入れ替わり立ち代わり、いろんな人が入っていた。十年くらい以前にここに来たことがあつたはずなのだが、そのときは足湯に入ったかどうか忘れた。時間の余裕があったので今回はゆっくりと浸かれたが、靴と靴下を脱いで入るだけだからすごく気軽でこれはなかなかいい。残念ながら夜になると今一つ風紀がよろしくない雰囲気があって、わざわざ遠方から来て楽しめる温泉地とは言いがたいのだが、近場に住んでいる人にとってはそれこそ都なんだろう。
土産を買ったり、夜の公園でブランコに乗ったり(^_^;)して時間をつぶし、6時過ぎに会場へ。 山口情報芸術センター、パッと見た感じは、面積だけは広いものの横長の建物が長屋かプレハブっぽくて、なんだか場末の放送局みたいである。芝居小屋としてはどうかという印象だったが、中に入ってみると、客席にかなり急な勾配が付けられていて後方座席でも舞台が見えないということはない。舞台には奥行きもあり、照明はずっと暗いままで、袖がそのまま客席に繋がっているかのように見え、狭い空間を広く見せる工夫がされている。 今日の公演はフランスのフィリップ・ジャンティ・カンパニーによるライブ・パフォーマンス『バニッシング・ポイント』。 待ち合いのロビーでは、スクリーンに舞台の一部を抜粋して上映していたので、携帯のカメラで何葉か撮る。歪んだ映像しか撮れなかったが、会場内は当然撮影禁止なので、これでガマンするしかないのである。 テレビも設置してあって、そこでは昨日の『ニュース23』に出演していたフィリップ・ジャンティその人が筑紫哲也のインタビューに答えていた。「日本の文楽に影響を受けた」ことも告白。特に、筑紫哲也の「タイトルの『消失点』とは、公演を続けてきて限界に来たということでしょうか?」という質問に対して、ジャンティ氏が「人に必ずある自殺願望を想像していたのかもしれませんね」と答えていたのが印象的だった。
この世界でも最先端、最高峰にあると思われる舞台をナマで、しかも日本で見られることの至福は、とても生半可な言葉では表現できないが、今回の芝居も変幻自在、レインコートの男女たちが、海底人が、鳥が、鳥籠の中の老人の生首が、人形の貴婦人たちが、小人が、巨人が、現れては消え、ただひとつの消失点に向けて疾走して行く。 不条理なシチュエーションとナンセンスなギャグが交錯し、役者たちはマイムともダンスともつかぬパフォーマンスを繰り広げる。難解なようだが、それでも「演技のうねり」は観客を忘我の地平へと案内していく。紛れもなく、これまで見た全演劇のトップクラスに位置する舞台だった。
余韻に浸りながら帰途につく。電車もバスも最終で、帰り着いたのは12時過ぎ。芝居のチケット代より、交通費の方がかかってしまったが、これだけのものが見られるのならば、そのくらいのおカネを使っても全然損した気分にはならないのだった。
2002年11月20日(水) 爆走��/反戦映画ベスト5/『スパイラルアライブ』1巻(城平京・水野英多)/『新・ゴーマニズム宣言』12巻(小林よしのり)ほか 2001年11月20日(火) オタアミに行くぞオタアミに行くぞオタアミに……/『COMAGOMA』1巻(森下裕美)/『おさんぽ大王』1巻(須藤真澄)ほか 2000年11月20日(月) 通勤だけで力を使い果たしてる日々/『薔薇の木に薔薇の花咲く』(いしかわじゅん)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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