年も押し迫ってきたが、アパートの下見に出かけた。
西荻とか高円寺に住んでみたいなとも思ってたけど、いざとなると知らない町での物件探しは億劫。家賃も安いし、今までの町でいいやと思い始めた。
とりあえず近所の不動産屋に手頃な貼り紙が出ていたので、そこに入ってみる。
ドアを入ると爺さん一人。 「あの〜2月中旬から入居したいんですけど」と切りだすと「まだ早い。」
「でも家賃と部屋の雰囲気をつかんでおきたいので、何件か見られません?」と聞くと、「今息子がいないので、鍵がどこにあるかわからない」
・・・じゃなんで開店してんだよ。
いい加減呆れたが、その物件ちょっと良さそうだし。。。 「じゃあ、とりあえず間取りのコピーもらえます?」って言ったら「コピーが温まるのに時間がかかる(電源入れて起動するまでと言いたいらしい)」
コピーの電源すら入れてねーのかよおおおおおお!!!!!!
この爺さん、ボケ老人ならいいんだけど、半端にスレてる。 こっちが居座ってると、どうも身の上話をしたくなったらしい。 「私は昔、ジャーナリストでね・・・」とか言いだした。
ジャーナリストが今やコピーも使えないと。そうですか。確かに昔はマジで新聞社の屋上に伝書バト飼ってたらしいですが。
「昭和35年からはここで不動産やってるんだが」 ・・・一体ジャーナリストとして働いてたのは何年間だ?
「となりの建物でずっとやってたんだけどね。妻が死んで、こっちの新しい建物に引っ越して。」 この不動産屋、新築してからも、隣に古いのが残ったままになってたのだ。 うり二つの新旧の建物がずっとあるので、不思議に思ってた。
「隣の建物には、女房の写真がずっと飾ってあるんだ。周りはなんで壊さないのかと聞くけどね、女房がいるから壊さないんだよ。」
なんだかしんみりした話になってきてしまった。 このあたり、ジジイが客からもらった干イモを2人で食べながら話してる。
いい話なんだけどね、隣の建物、壁とかかなり傷んできて正直コワイんだが。う〜ん、気持はわかるけどなあ・・・あんまりそのままにしとくのは、逆に故人にとって良くない気もするぞ。
しかし部屋を借りに来たのに、爺さんの身の上話・干しイモ付き。 なんだか劇団ひとりのコントにでもありそうだ。
あいづち打つのも面倒になってきたので 「じゃあ、私が隣の建物に住んであげましょうか?奥さんと」 って言ったらジジイ苦笑い。 「アンタももう少し化粧したらキレイそうなんだけどねえ〜」
大きなお世話だ、クソジジイめ。
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