Daily Journel@M403



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2001年07月01日(日)    老いとテニス

一般のテニス愛好家を対象としてテニススクールなどが主催するトーナメント
(試合)のこと、俗に草(くさ)トーナメントという。

この名前の由来は、残念ながら分からない。10年以上前のテニス全盛期には、
きっと雨後の筍のようにトーナメントが開催されていたように記憶しているので、
雑草か何かのように数の多いトーナメントを総称した表現かもしれない。

そして、今日、草トーナメントにダブルスで参加したのだ。大学の後輩と。
後輩の参加人数が3人と奇数だったので、私も一緒に組ませてもらうことにした。
草トーナメントって、一体どんな人達が出るのかな?強いのかな、弱いのかな。
初めて参加する後輩達は、未知の世界に好奇心と畏怖を感じているようだった。

私自身は、草トーナメントは2回目。初めて出たのは大学2年の時だった。
やはりダブルスで。その時は、自分の母親くらいの年齢のおばさん2人に、もう
ボレーでこてんぱんにやられた記憶が残っている。どう考えても、体力やパワー
では負けていないはずなのに。

大会開始の16:30ともなると、会場のクラブハウスは沢山の女性で一杯になった。
上は50歳前後の方から、下は20歳そこそこの小娘まで。だが、大半の女性は20代
後半から30代後半の人で占めているようだった。

全部で17組ほどの参加があり、まずA〜Dまでブロックに分かれて総当り。
そして優勝ペアが各ブロックを代表し決勝トーナメントに出場することが出来る。

肝心の結果は、後輩ペアがAブロックで2勝1敗のブロック2位。
私たちの方は、Cブロックで1勝2敗のブロック3位で終わった。惨敗。(笑)
しかし、後輩3人にとっては、それぞれに得るものが大きかったようだ。

いつも同じ部内の固定のメンバーと練習していると、どうしても、みんな似たり
寄ったりのプレースタイルになってしまうという弊害がある。よって、たまに
変わったプレースタイルの人がいたりすると、本来の実力では五分五分なのに、
呆気なく負けてしまったりする。それが、いつも見ていて勿体無く思っていた。

一生懸命に練習はしているけど、いつも決まりきった練習でショットに幅がない。
ドロップショットを打つとか、ネットに出るという行為は、高度で自分には縁の
ないものと思い込んでいる。それをする技術はあるのに使ってみようとしない。

草トーナメントに出てくる方々は、はっきり言って、フォームが美しい人ばかり
ではない。独特の癖のある打ち方をする人の方が圧倒的に多く、ドロップショット
だって打つしネットにも出て、結果、ポイントは向こうに持っていかれる。

テニスはフォームの美しさでは勝てない。ある種の駆け引きや狡さがないと。
学生は、この点が見えていない。かつての私もそうだった。大切なのは、今ある
自分のショットを”どう使って試合を有利に運ぶか?”なのだ。

昨日の本の話じゃないが、無我夢中でその日その日を過ごしている若者には、
自分の近くのものや足元しか見えていないことが多い。でも、テニスが上達する
過程というのは、やはり山登りに似ていて、同じ場所に立っていても、何処を見て
いるかで、その後の成長が違う。足元しか見ていない者は大きく成長しない。

後輩達は、かつて私が歩み、今もはっきりと思い出すことのできる、その同じ道
を歩んでいる。そして、老いた私は、その道をいまや別のところから眺めている。
無我夢中で歩んでいるうちは、けっして見ることのない全景の、美しい眺めの
ひとつとして・・・。


私が後輩に力づくのテニスで勝負することは(現実的に)不可能だし、それが
さほど重要とは思えない。力に力で応えようとするエゴを捨て、後輩の視点を
もっと広い方向に導くのが、今の私の役目だと思っている。

試合が終わった後、一緒にダブルスした後輩とベンチに座って空を見上げると、
そこには晴天に月が明るく輝いていた。まるで「最後までちゃんと見ていたよ」
と囁くかのように。

---
ところで、私と後輩のペアが初戦を戦った、40代と50代のペア。

なんと、ブロック1位で決勝トーナメントに進出し、Dブロックの相手にも快勝。
トーナメント決勝までコマを進めた。はっきり言って、威力のあるボールを打つ
スタイルではない。しかし配球が素晴らしいし、ミスの少ない安定したプレーで、
ブロックの中で一番手強く試合巧者なタイプだった。

試合の後に軽くお話させていただいたのだが、40代の女性のお子さんは後輩たち
と同じ大学の同級生だった。私のペアの相手の子は、自分の母親と同年代の人に
負けたことになる。殆ど毎日テニスをしているのに。

もう一つのペアの方のブロックには、そこまで強烈なインパクトを与えたペアは
いなかったらしいし、どれも接戦だったようだから、初めての草トーナメントで
カルチャーショックをより強く受けたのは私のペアの子の方だろう。

彼女は、何を思い何を感じただろう。試合後に「私も、あんな試合巧者な人になり
たい・・・」と呟いた、その視点と気持ちを大切にしてほしい。


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