彼の声を聞いていると安心する。 彼の言葉は私を元気にしてくれる。
「私のどこがきらい?」数ヶ月前、彼にたずねた。 「ネガティブなところ」彼はひとこと、そう言った。
ポジティブに生きようと思った。 彼の理想に近づくためとか、決してそんなことではなく。
あの人のことを忘れたわけではない。 彼の感触はまだこの唇に残っている。 彼の腕のぬくもりはまだこの肌に残っている。
「どうして?」 その問いが消えることはないけれど。
あれは異国での夢の一夜。 儚いただ一瞬の幻。 もう、塵となって消えた出来事。
人間である私は、幻影に抱かれてばかりはいられない。
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