独り言をつらつらと | old day days list new day |
出逢いと別れ 泣くも笑うも 好きも嫌いも 告別式→→→2002年08月29日(木) 明け方6時まで話し込んで、 気がつくと私はキッチンの足拭きマットの上で トイレの足拭きマットを枕にして バスタオルをお腹にかけて眠っていた。 10時過ぎに目が覚めた時には既に皆式の準備をしていてばたばたしていた。 炊き出しの煮物の匂いや、お吸い物の匂い、 おにぎりを握っているおばさんたちの足元で私は寝ていた。 喪服を着たまま、メガネなしの裸眼0.01の視力でうろうろしていた。 なにをすればいいんだろう。 手伝いすればいいのかな。 親族は何もしなくていいのかな。 こういう時ってどうすればいいんだろう? ねぇ父ちゃん、どうすればいいんだろう? 相変わらず私はバカだから、わかんねぇよ。 ロビーに行けば弔問客や親戚がソファに座ってお茶を飲んだりしていた。 私は昨日も見た式場のドアの前に立てられた看板をまた眺めていた。 『お世話になった 一人ひとりに 感謝を込めて ありがとう』 父ちゃんからの言葉として見られるように置いてくれた 葬儀屋の計らいだとは思うんだが。 とにかく4時間しか寝ていなくて、しかも台所で寝心地最悪だったので 気分が悪かった。 それでも今日の式まではしっかりしなきゃと リポビタンを飲んだら余計胃が痛くなってきた。 お昼の炊き出しのご飯を少しもらって横になった。 じわじわと時間が過ぎて、妹に式場に呼ばれた。 お経、幼稚園のときに習ったお経はまだ覚えていた。 少し口ずさんでみたら父ちゃんに届くと思った。 喪主長女二女の焼香、母ちゃんの次に呼ばれた名前は私だった。 親戚陣はこのときまで私が麻子だなんて気づいてなかっただろう。 親戚の焼香、小さないとこの子まで何も解らず焼香する。 それをする理由はいつ理解するようになるんだろう。 弔問者の焼香、来る人皆が、父ちゃんを思い出す人ばかりで 一人一人の顔を極力見て、頭を下げた。 友人代表の弔辞、『義を貫くこと』父ちゃんは皆にそれを教えてくれた。 弔辞をこの人に頼んで本当に良かったと思った。 親族代表の挨拶、母ちゃんのじっちゃーが挨拶をした。 じっちゃーの横に立つ母ちゃんは娘で、父ちゃんは娘の旦那さんだった。 私にしては上出来と言えるほど気力が途切れず続き そして絶対に凛とした姿勢で父ちゃんを送ろうとしていた。 涙が不思議とこぼれなかった。 最後の別れ。 お棺のふたが一日ぶりに開けられ、お客さんが花を入れて別れを偲んでくれた。 私は父ちゃんの姿が見えてから、左隣に立ったまま動けなかった。 大人なのに。皆が皆泣いて泣いて、私の所へ来て励ましてくれたり、 母ちゃんを励ましたりしている。 父ちゃんの顔を2日ぶりに見て私の中でピンと張っていたものが切れた気がする。 ふたを閉められる寸前にはっと我に返り、ユリの花を持ってきて父ちゃんの胸元へ添えた。 『父ちゃん、あたしは泣かんからね。父ちゃんの子だから絶対に泣かんよ! また会うが。また、父ちゃんの娘として会おうがねぇ! じゃあね。またね・・・。』 棺の中の父ちゃんは、いつも店で見ていたあの父ちゃんだった。 出棺のときに父ちゃんの骨壷を持って横に寄り添って出た。 『どれ、父ちゃん行こか。』 弔問客は式場の中には入りきらず、300人は来ていたと後から聞いたが 私の目の前には、父ちゃんとの最後の別れに来てくれた人たちが 300人以上溢れていた。 なんだか本当に嬉しくなって、そしてそれがすごく誇りに思えた。 涙はもうでなかった。 その代わり胸を張って父ちゃんを送り出す力が溢れて、私は笑顔になっていた。 他人が見たら不謹慎なと思われるかもしれない。 でも心底から笑顔になる力が湧いてきたのだ。 何故かはわからない。 でもバスに乗るまで、出棺でバスが動き出すまで、私は笑顔だった。 その時父ちゃんとは、また逢える気がした。 その日が待ち遠しくて、楽しみなんだ。 後日、家族から私だけが冷たいと言われた。 父ちゃんは今頃お浄土で、じいちゃんやばあちゃんと会ってると思う。 『話したいことがまだたくさんあったんだ』 ばあちゃんが亡くなった時に父ちゃんは言った。 私も父ちゃんと話したいことはまだまだたくさんある。 でもこっちの世界で父ちゃんの影を淋しがりながら生きると 父ちゃんはこの世に引きずられて、お浄土へ行けなくなってしまう。 と私なりの理論で考えていた。 母ちゃんが父ちゃんのものを見るたびに泣き出し、 父ちゃんに会いたいと嘆きだす。 それを見るのが辛くて思わず冷ややかな態度をとってしまう。 そういうところが父ちゃんと私の似てるとこだ。 冷えたことを言うようだけど 父ちゃんは次の世界へ行く準備をしているとこだろう。 父ちゃんも絶対私達と話をしたいはずだ。それはわかってる。 でも今、次の世界へ行かせてあげようと、私達もしているところで やっぱりこっちで引っ張って行かないように引き止めたら父ちゃんがかわいそうだ。 別に宗教めいたことを言ってる訳じゃない。 理解されようとも思っていない。 でも、逝った人間と残された人間、それぞれがまた違う人生をおくると私は思う。 思い出を話して過去を懐かしむのはいいことだと思う。 でもそれに誇示しすぎて、 これからの時間そればかりに費やそうとするのはどうだろう。 だからといってきっぱり忘れろと言ってるんじゃない。 ねちねち後を引きずって生きていけとも言っていない。 その答えは、それぞれが思う念にあると私は思う。 家族から見た私は冷たかろうが構わない。 それでも私の中には、あの父ちゃんの血が流れている。 いつかは会いに行くよ。その時まで僕なりに頑張ってみる。 そしたらもう一度抱きしめてよ。 (ポルノグラフィティ デッサン#2〜春光〜) こんな時にも、私はポルノの力を少し借りる。 私の原動力に変わりはない。 そして今日も朝が来て一日が始まり、空は晴れて人は動き出す。 |
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