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壱カ月昨日明日


2005年04月02日(土) 眼鏡と文楽、豆乳と市場

 ずいぶん前に起こったことのような気がする、土曜日のできごと。

 終日、文楽鑑賞の予定だった。張り切って公演初日のチケットを取った。楽しみにしていた。でもあるトラブル、というか、失敗、というかなんというか、があって、11時の開演に間に合わなかった。ショックだった。トホホな気分だった。
 
 劇場に着いたのは1時30分ころで、結局「伽羅先代萩」を見逃した。また住太夫さんを聞き逃した。なんたる悲劇。昨夜夜更かししたことと、朝からのバタバタが災いしてか、「傾城反魂香」ではウトウト居眠り、夢と現を行ったり来たり、ほとんど覚えがない。これまた悲劇。次の「道成寺入相花王」はちゃんと観た。彼氏に逃げられた清姫が嫉妬に狂い、蛇身となって川を越えて男を追いかけていく話。コワイね。逃げた男のことはあっさり忘れたほうがいいよ、誰しも必ず「次」というものがあるんだからね、と思うが、まあそんなこと言ってたら浄瑠璃なんて成り立たないし、観ていられない。

 一部と二部の間に、一階の展示室で「文楽ポスター展」を観て、黒門市場を見て回る。店先でコップ一杯60円で豆乳を飲ませてくれる豆腐屋があり、豆乳はあまり好きではないのだが、試しに飲んでみる。豆腐を砕いて液体にしただけ、という感じ。液体豆腐だ。豆乳ってこんなんか。近所のオジサンや買物帰りのオバちゃんがふらりと現れて一杯グイッと飲んでいく。実にカジュアルだ。カジュアル豆乳。
 豆乳を飲んでいたら、『美しき天然』を鳴らしながら次郎長ルックのチンドン屋さんが来て、新装開店した喫茶店のチラシをくれた。
 千日前通りのパン屋で、幕間に食べるパンを調達しておく。

 引き続き、二部を見る。「楠昔噺」は、楠木正成と宇都宮公綱がどうたらこうたらというような時代物で、けっこう話が複雑。予備知識なく、人間関係を理解するのに時間がかかる。途中から公綱の妻、照葉を遣っている勘十郎さんの顔しか見ていなかった。最後に「艶容女舞衣」を観る。夫の浮気、出奔、他の女との間にできた子どもを押し付けられても、私は悪い女房でした、とかなんとか言って、じっと耐える健気な女、お園を遣う文雀が艶やかでやっぱり素晴らしい。耐える女は好きではないが。でもそんなこと言ってたら浄瑠璃なんて…、以下同文。

 家に帰り着くと、Tに、これどうしたん、と言って、テーブルの上に投げ置いてあった、フレームが割れツルのところが折れている、見るも無残な私の眼鏡を指し示される。今朝、私が踏み潰したのだった。リビングの絨毯の上で。文楽鑑賞の直前に。1本しかない眼鏡を。思いっきり。足の下で、ベキッと、不吉な音がした時は、あー、と思った。ただ、あー、と、うめきのような声。
 眼鏡がないと、観劇や映画、展覧会、読書の時、ああそれから忘れてた仕事をする際にもけっこうキツイので、意を決して近所の眼鏡屋で急遽新しいのを作ってもらった。だから開演に遅刻してしまったのだった。こんなにバタバタと眼鏡を新調するつもりはなかったのに、ものすごく不本意。

 毎日なんかいろいろある。取るに足らないような細かくイジイジとした出来事がほとんどだけどでも、なんか人生ってドラマだわ、と思ったりもする。

・購入物:文楽4月公演プログラム

・朝食:バタートースト、バナナ、甘夏みかん、珈琲
 昼食:眼鏡の出来上がりを待ちながら家でうどんを食べた
 夕食:幕間に。ピロシキ、くるみパン、ドーナツ、珈琲
    帰宅後、鮭茶漬け

 


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