たとえば、ボーナスの査定で専務と面談をするような場面があったとしよう。 私は今、新商品開発プロジェクトをチームリーダーとして取りまとめているところだ。新商品のコンセプトは、まだチーム内で議論がまとまっておらず、若手のメンバーはこれまでにない新発想で一発大当たりを狙おうと主張している。プロジェクトの内容はチームに一任されているので、他の社員や役員たちが口を差し挟む余地はないが、プロジェクトそのものは社内でも注目を浴びており、チームメンバー以外の社員もその内容について何かと話題にしている様子だ。漏れ聞くところによると、折からの不況のための業績不振もあって、管理職クラスの社員やとりわけ保守的な経営陣は、冒険的かつハイリスクなことをするのには消極的で、若手メンバーの言う「新発想」にはあまりいい顔をしていないらしい。 そんなときに、部下も含めたチームメンバーのボーナス査定の相談を、専務とすることになったわけだ。 専務が若手メンバーの「新発想」に消極的であることは知っている。だからなおさら、念のためプロジェクトの進行状況について説明して、一応話を通していた方が、このあとの進行もスムーズではないかという気がした。そんなわけで、ボーナス査定の会議の「ついでに」今のプロジェクトの状況について話をしておくことにした。 プロジェクトの説明をし終えた私に、専務はこういった。 「中立の立場で社内の意見にも耳を傾けながら、公正に決めてくれたまえ」 もちろん、一任されているプロジェクトなのだから、何か意見を言われたとしても聞く必要はない。 でも、ボーナス査定の権限を持っているのは、専務および専務とおそらくは同じ考えを持っている役員たちである。しかも自分のボーナスだけではなく部下のボーナスだって同じだ。 プロジェクトに予算をつける場合の額の査定だって、「経営的判断」にもとづき最終的には経営陣の意向が反映されるだろう。
そんな背景事情がある中での専務の発言を、私はどう受け止めたらいいんだろう、なんてことを、今日の「報道ステーション」を見ながら考えたりしたのだった。F舘I郎はツメが甘いと思うよ?
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