電車に乗り遅れたり。 乗ってた人が多かったり。 本の中身が頭に入ってこなかったり。 全部、自分のせいなのに。 寺島陽介、って人がいないと、あたしは苛々する。
それは要するに。 あたしに常にある、何でも受け流すあの余裕は、 寺島がいて、初めて生まれるものだということ。
寺島はあたしを、マリア様のようだと言ったけど。 やっぱり、それにはあなたがいなきゃいけないんだよ。
こんな自分のことは、高校生の頃から知ってた。 寺島と付き合う前から、そうだった。
付き合う直前の、友達としての、大喧嘩。 あれだって。 寺島じゃなきゃ、あんなに怒らなかった。 別の人が寺島と同じことをしても。 あたしはきっと、怒ることすらしなかった。 そんなの、面倒だから。
『もののけ姫』 あたし達が小6のとき、地域の子ども会で、 映画館に見に行ったのを憶えてる。 あたしの席の後ろに、 寺島と藤原が隣合って座ってたこと。 確か、2言3言喋ったこと。 まだ、憶えてる。
懐かしいなぁ。
出逢い、なんて、大げさだけど。
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