2004年11月20日(土) |
音量を最大にしよう。 |
1人になると、苛々して。 顔にかかる髪をあげることも、しなかった。 家まで15分かかる、駅からの道。 まだ14時半なのに、夕方のようで。
音楽がなければ、15分なんて歩いていられないといつも思うのに。 CDプレーヤーを出すのも面倒で。 ただひたすら、足を動かした。
途中で、寺島が通っていた高校の制服を着た男の子が、 あたしを追い越して行った。 ラグビーのバッグをかけて。 少し、ズボンを下げて。 …寺島はあんな着方、しなかった。
ブレザーを着た腕の中は、 いつも、温かくて。 きちんと締まったネクタイが、あたしの目線で。 顔をあげると、寺島の顔で。
何故だろう。 最近、その情景ばかり思い出す。
何にも、心配することなんてなかった。 疑う必要がなかった。 不安も、嫉妬も、 抱き締められれば、全て、寺島の胸の温度に溶けて。 あたしの全ても、預けて。
必死の思いで送った、連絡がなくなってから数えて、 3通目のメール。 返信があったらすぐ目覚められるように、 音量を最大にしよう。
連絡がなくなるなんて思わなかったから。 ついこの間変えた、着信音。 まだ1度も、鳴らせてあげられてない。
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