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近所の穴 - 2001年08月23日(木) 娘が物理の補習を受けに学校に行くという。 思えば、高校の物理の成績は惨憺たるものだった。 そもそも授業にあまり出なかったし、たまに出席しても、好きな本を隠れて読んでいただけなので、試験になったら何一つわからない。 追試、そして追々試。 たまたま隣りの席だった東大へ行ったSさんが、どんよりしている私を見かねて、最低ラインをクリアする箇所を昼休みに教えてくれたので、やっとこさ落第を免れたというお粗末さである。 当然、物理の問題で娘に突っ込まれたら、「あうっ、あうっ」と、急遽アシカになったふりをしてごまかすぐらいしか手がない。 それならば、である。 ここは一発、超難し〜い理論でも仕入れて、ヤツを煙に巻いてやろうという作戦である。 というわけで、図書館で借りてきたのがNHKスペシャル、『アインシュタイン・ロマン』シリーズだ。 動機は不純だが、自主的な物理の補習である。 これぞ母親の鑑。(おいおい、そのカガミ割れてるってば!) 最初に見たのは光と闇の話。 「光は粒か波か」という論争、そして次第に解明されていった粒でもあり波でもある光の性質。 量子論、不確定性原理に対してアインシュタインが抱きつづけた疑問・・・そんな話だった。 これは、たまたま並行して読んでいた養老孟司の『唯脳論』に、面白い記述があった。 (光は)視覚系の脳の方から話を詰めれば粒子だが、聴覚系の脳の方から話を詰めれば波動になる。こういう話では、当方の脳がやはり二項対立を生じてしまう。だから納得しづらい。 ・・・のだそうだ。 「それって全部ヒトの脳の話でしょ?」というメスで、理論物理学をサックリ、哲学もスッパリ。 解剖学的な見地で考察しちゃうと、アインシュタイン博士の究極の悩みも、案外簡単に読み解けてしまうらしい。 恐るべし『唯脳論』。 おっと、話がそれてしまった。 『唯脳論』については、また別に書くとして、アインシュタインに戻ろう。 次に見たのは、「悪魔の方程式」とタイトルのついていた、アインシュタイン方程式の話だった。 超難しい内容の方程式らしいが、ものすご〜く省略すると、“時空の歪み=物質のエネルギー”という式で、世界のしくみを一行にまとめちゃったということらしい。 この方程式から「膨張宇宙論」が導かれたのだそうだ。いわゆる「ビッグバン」である。 「この宇宙は約150億年前に起こった大爆発から、徐々に膨張し続けている」という説は、様々な観測データによって信憑性を裏付けられつつある。 観測機器の性能がどんどん良くなったので、人間は、超新星やブラックホールまで見つけてしまったのだ。 さて、そこで何が問題になるかっていうと、膨張しているということは、理論上、そもそものはじまりの点(はじまりの特異点)があるってことになる。 じゃあ、はじまりのはじまりはどうだったの? はじまりの点は誰が作ったの? なんにもない、ってどういうこと? などなど、子どもの頃に誰でも一度は考えて、大人に尋ねると「早く寝なさい!」って言われるような疑問を、科学者が真剣に考えなくちゃいけなくなったということで、それはまた「神様」の問題と「科学」の問題が、同じテーブルの上に乗ったということでもあるらしい。 さあ大変。 ・・・って、神学者でも理論物理学者でもなく、ハッブル宇宙研究所に勤務しているわけでもないと、実は何一つ大変にならないのがこの世の不思議だ。 用を足して、使おうと思ったトイレットペーパーが芯だけだった。 ふーむ、ペーパーのそもそものはじまりには芯があったのかぁ・・・これは大問題だ。 確かに、これは差し迫って、さあ大変、である。 と、下ネタに流れるのをぐいっと止めて、今日の本題。 というか、このビデオで一番感銘を受けた(単にウケたとも言う)くだりを少々。 このビデオで紹介されていた、ビッグバン理論とそっくりな伝説を語り継いでいるアフリカのドゴン族の話である。 ドゴン族は、天文学が発達する遥か以前に、土星に輪があることや、木星に衛星があることを知っていたという。 なぜ知っていたのかは謎だそうだ。 インタビュアーがいろいろ長老に尋ねる場面があった。 「宇宙にはブラックホールと言って、いったん入ったら2度と出てこられないような穴があるそうなんですが・・・」 「うんうん、近所にもそんな穴がある。天にあってもおかしくはない」 をを! これを叡智と呼ばずして何と呼ぼう。 ドロ長老、流石だ。 というわけで、学習のまとめ。 「近所の穴」に気をつけろ! ・・・・・・・ こうして、「お母さんのための物理の補習−第1講」は有意義(?)かつ、めでたく終了した。 明日より、第2講、E=mc(cには二乗がついてるぢょ)の公式について勉強するらしい。 (やめとけ〜!by びー子) ...
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