電話のベルを鳴らし続けている。あー、どうしたのかな、御飯かしら。お風呂かしら。運転中かしら。友達の家かしら。電池が切れそうなのかしら。大切な話し合いをしているのかしら。どこかに電話を置き忘れたのかしら。それとも、出る気が無くなっちゃったのかしら。
想像が心配に、憶測に、妄想に。結局「気付かなかった」という間の抜けた答えが返ってきた。力が抜けたのは間抜けさのせいではなくて、安堵感のなせるわざ。
彼や電話に縛られているのではなくて、自分自身の脳内でぐるぐると想いに巻かれるわたし。もうちょっと世界は単純なのだから、わたしはゆるやかに構えていて良いと思う。