囁き
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2001年05月30日(水) 雨に降られて

 声を張り上げても伝えきれない思いがある。

 泣き叫んでも伝えきれない思いがある。

 拳を握り締めても耐えきれない思いがある。

 吐き出しても胸に残る思いがある。


 今日、一時間弱、雨に降られた。尾崎さんのライブのCDを聞いていた。濡れて、雫を落とす髪をかきあげ、呟くように歌った。遠くで、街のネオンとマンションの明かりが綺麗だった。

 その場所が、僕は好きだ。

 小さな丘のようなところに作られている狭い道路。胸の内の不快感が、雨と一緒に溶けて流れてしまえばいいと思った。身体が冷えていく。Tシャツが身体に張りつき、煙草を咥えて火をつけた。火はなんとかついたけど、火がついてないところ以外は濡れて・・・それでも吸えた。押し付けようとして、やめた。そんな小さい傷じゃ、意味がない。雨に降られた寒さのせいか、身体がいたくなってきた。気にしないけど。

 耳のイヤホンが、歓声と彼の歌声を運んで来る。泣きそうになって、止まった。一人で泣くのは、そんなに珍しいことじゃないけど・・・『彼女』の前で泣くのはやめようと思った。弱さを認めるどころか、弱さに埋もれてしまうから。

 彼が、真実の愛を求めていたことが、また少しわかった。『彼女』だって、演技をしているかもしれないんだ。それが怖いんだ、僕は。どうすれば、完全に信じることが出来る?

 空を見上げると、雨と僕が垂直になる。天に向けた唾は、己に降りかかるというけど・・・

 僕も、雨と一緒に溶けて流れてしまえばいいと思った。

 なにやってるんだろ・・・自分の腕を握り締めたら、結構冷たかった。この場に『彼女』がいたらなって思った。振り向いたら・・・誰もいない。名前を呼んだ。きっと怒られるだろうな。こんな事してたら・・・

 なんか、淋しかった。あぁ、誰かに愛して欲しいんだなって思った。胸を握りつぶされそうで、拳を握った。なんか、わけわかんなかった。こっから落ちたら死ぬな・・・どうだろう?ネオンだけが、優しかった。やっぱり、街が好きなんだって思った。
 思いだけが膨らんでいく。こうしていれば、何時までも続けられるだろうな・・・

 彼女に逢いたいな・・・抱き締めて欲しい。でも、それは逃げてるだけなんだろうね。髪をかきあげて、雫を拭う。もっと降って欲しかった。風も強く吹いて欲しかった。メチャクチャになっちゃえ。全てを薙ぎ倒しちゃえ。

 元カノも、同じ痛みを持ってたダチも、『姉』も元気かな・・・?帰り道、そう考えた。やっぱり、誰かに愛して欲しいだけ、温もりが欲しいだけなのかなって思いながら。

 誰か、愛して。名前を呼んで。抱き締めて。強く、強く抱き締めて。

 愛して。


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