Tといつものように会社を出る。 ルービックキューブが買いたいと玩具売場へ寄ることに。 パズルとか。知恵の輪とかが好きらしい。 ふむぅ。私はそういう系統一切苦手だ。 頭の中で立体図形を描ける人はすごいと思う。
開封して、駅のホーム。 いつものグリーン車への乗り場へ歩く中、 真新しいキューブを渡される。
「好きなように動かして」
そういって、いつものように、私の前を歩いてゆく。
Tを見失わないように歩きながら、 6面、綺麗に色が整ったキューブを動かす。 カシュッ カシュッ と 小気味の良い音を立てて 色がどんどん散り散りになってゆく。 隣同士の色が違う色になるように狙う。 だけど、ただ動かすだけなのに、とてもむずかしい。 気がついたら1列同じ色だったり。
なんとか思うように動かして、Tに渡す。
二人掛けの椅子に並んで座って、 Tは私の仕組んだキューブを解いてゆき、 私は、ソニプラで買ったお気に入りの猫のグミをほおばる。 Tの器用な指で動かされてゆくキューブを横目で見ながら たまに、猫をつまんでTの口に運ぶ。
とても平和な時間だ。
Tからは、大好きな身体の匂いがするし、 大好物のグミは好きなだけ食べられるし グリーン車の椅子はとても座りごこちが良い。
平和すぎて眠くなって。 目を閉じて、揺れに身を任せて、 ああ、そろそろ眠りに落ちるなと思ったところで 目をあけた。
キューブを戻される。
ちょっとやってみろということらしい。 ちなみに、ココとココはもう揃ってるよ、と忠告される。
うぅ。それを崩すと、また怒られそうだ。 適当に動かしているフリをして、同じ場所に戻す。
無理だと突っ返して、説明書を読むフリをする。 それでも、矢印と想像で描かれた説明書は、 すぐに理解できるはずも無く。 結局、カシュ カシュ と動かすTの指をぼーっと眺める。
簡単に解かれたくないなと思う。 ずっと解けなかったら面白いのになとたくらむ。 いつかは、解かれてしまうと解っているのに。
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