Tが会社を辞めた。 至極当然の流れであるし、 一緒に居たから、知っていた。 経緯も、悩みも、全て。
止めたかった。 出来れば、もう少し、もう少し、一緒に居たかった。 けれど、出来なかった。
私もそろそろ旅立つ時が来たのかも知れない。
昨晩、最後に、Tと一緒に会社へ来た。 最後の荷物を取りに、 退職届を置きに。
こうでもしないと辞められない会社、 狂っているのは何処でも同じだ。 けれど、一身に受けていたTは、 もう限界を越えていた。
私が居るから、と頑張り続けた。 私のために、と言ってくれたときは嬉しかった。
だから、最期まで見届けた。
隣に、奴が居ないのは、とても変な感じだ。 タバコを吸いに外に出て、 後を追うように玄関を豪快に開けて出てくる奴が居ないのが不思議だ。 今日、何を食おうかと煙たそうに言う言葉が聴こえない。 我が物顔で、私の身体を触る手が見付らない。
何でだろう、とても泣きたい気持ちに駆られる。 泣いても仕方が無いのに。
Tがずっと傍に居ることで、 どれほど、助けられただろう。
どれほど、甘えていたんだろう。
うそだといってほしい。 夢であってほしい。 遅れてすんません、って玄関を開けて入ってきてほしい。
でも、私は見届けたのだ。 最期の、Tの姿を。
その程度のつながりだ。 Tも私も否定するけれど、 何処かで解ってるのだ。
バイバイ。
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