何か聞きたいことがある。 何か云いたいことがあるの?と返ってくる。 そのタイミングに少し驚く。
手の繋ぎ方が定着した。 今までとは全く違う新しいやり方。 これが、身体の大きいAにはまる、私の位置。
始終、繋ぐ、右から左、左から右、 私の場所がいろんなところに泳ぐ。
むせ返るような人ごみで、 ふと、のどか乾いたな、と呟く。 ほかの人間には聞こえないような声。 実際に気が付かれた事は無い。
自販機で何かジュースを買おう。
ふと、目の前にミネラルウォーターのペットボトルが差し出される。 Aがさっき、買ったやつ。まだ十分冷えているそれは、少し汗かいて。
え、アタシ、声に出して云ってた?と、とぼけてペットボトルを受け取る。
気が付かれたことに、戸惑う。
手の甲にキスをされる。 どういう態度で返したらいいか解らないからおどける。 なんだかよく解らない、顔がとても熱くなる。
そういう表現は本当になれてないんだと。結局自白した。
別れ際、Aの手の甲が目の前に来て、私の唇に触れた。
キスだ、とAがはしゃぐ。
恋愛の優先順位が、あまり高くないと思う。 Aも私も、なんだかんだ仕事人間だ。 疲れたら寝るし、無理してまで遊ばない。
それでも、感情の表現の仕方はかなり違う。
Aはずっと抱きついたまま寝たいみたいだし、 私は背中を相手の身体に押し付けて寝るのが好きで。
ところ構わず抱きついたり、体に触れるのは私の癖だし。 ところ構わず、ケツを触るのがAは好きみたいだ。
アホな奴らだと思う。
すこしづつ、Aに我侭を言えるようになった。 タイミングを逃さずに言葉を発せられるのはすごいと思う。
キスが好きなら、いくらでも。
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