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2006年10月28日(土)   歩んでく。  

Aのベッドで過ごす夜。
あまりにも次に、次に、もっともっとと要求が重なり。
私の身体はもう疲労ピークで。
ベッドから降りて、じゅうたんの上に横になった。

眠いの?

そんな声が頭の上から降りてきて。

「眠くもないし、sexもしたくない。」

それだけ答えて、手を跳ね除けて。
ほとほとアホ臭くなって、言葉も出なくなった。

きっとコイツは、sexが好きで。
私を好きなわけじゃない、そう思っていた。

お互い様だと思うのだ。
手っ取り早く、モーションかけたのはアタシだ。

もういいや、そうつぶやいた。
sex好きな女を見つければいい、私には無理だ。




泊まる、と解っていたのに。
私が身体を起こしたのは昼過ぎで。
着替えも何も用意せずにAの家へ来ていた。


考えたら歯ブラシが無い。
現実的なことを思い出した。
そうだ。歯ブラシ買いに行くといって、出て行こう。
時間はまだ23時過ぎだし。
帰ろうと思ったら、どんな手だって使える。


安い映画をテレビで流していた。
それを見ているというフリは、エンドロールで終わった。

私をじゅうたんからベッドへ上げるということを諦めたのか、
Aが電気をけして、布団にまるまる音がした。

携帯のライトを手にして、かばんと洋服をかきあつめた。
ドアを閉めて、玄関先ですばやく着替えて。
ドアの向こうの静まり返った部屋の気配を感じた。

何かおかしいと、Aも思っている。
けれど、何がおかしいのか、私が話さないからわからない。
何か云いたいことがあるんだろう?と何度かAに聞かれた。


いいや、このまま出て、何処かからメールを送ればいい、
sex好きな女を見つけろと、終わりにすればいい。







玄関に手をかけようとした瞬間、
静かな空気を破るような軽快な音が響いた。
Aの電話が鳴ったらしい。
部屋の向こうで、Aがはしゃぎながら話す声が聴こえる。
・・・私と一緒の時にはあまり聞かない声。
おそらく電話の相手は友人なんだろう。



「・・今? 今デート中だよ。」



何かが私の中で緩んだ。


玄関から手を外して、しばらくAの話し声を聞いていた。




「え?ほんとだって。嘘じゃないよ。デート中!
ちょっとまって、今変わるわ。」



いつのまにか、私はドアをあけて、Aの顔を覗き込んでいた。


Aの携帯を受け取り、電話の向こうのまだ顔も知らない相手の声を聴き、


「・・はじめまして、」



挨拶をしていた。


電話の向こうのAの親友は、本当に私が居たことに驚き、
自己紹介をはじめ、はしゃいだ声で、二言三言会話をし、
Aに電話を返したときには、もう全てが如何でもよくなっていた。


電話をきって、Aが私に向き直り、
あいつなんていってた?びっくりしてた?
はしゃいで、私を抱き寄せた。


「。。そうだ、歯ブラシ買いに行くんやな?」


「。。うん、アイスとかも買って来ようかなと思ってる。
・・一緒にいってくれる?」






話そうと思った。
素直に、甘えようと思った。



あなたはHが好きなの?と聞いてみた。


いや、Sherryが好きなんだよ。と返ってきた。




私はてっきり、好きとかそういう感情は無くなって、
ただHが好きな奴だと思ってたよ。




それは、残念だったね、好きだからだよ、















心のつながりを大事にする人も居る。
好きだから身体で繋がりたいと云った奴も居た。




私がたとえば前者だからといって。
それとは違う愛情表現をするAを勝手に誤解していたのかもしれない。
そして、いつものように、その思い込みで、
私はまた飛び立とうとしていた、ことに気がついた。



もう少し、このまま、この人を見ていってもいいかもしれない。
じっくり、じっくり、知っていけばいいのかもしれない。



でも、回数は減らしてね、と笑いながら、お願いした。
そうか、身体つらいか、と残念そうに返すAの鼻を齧った。







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