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記憶2 - 2003年09月25日(木) 音楽とともに記憶が甦ることがよくある。 …という話をこないだも書いたっけ。 秋の虫の音を聴いて学園祭シーズンにぶわーっとタイムスリップした話。 昨日も夜あるCDを聴いてまたしても同じ感覚におちいった。 今度はシューベルトのある小品のCD。 弾いているのは往年の巨匠、ウィルヘルム・ケンプ。 私の大好きなピアニスト。 もう10年も前のことになるか、 私はあるピアニストの全国ツアーを担当し、ほぼ1ヶ月、毎日のように日本各地を その人とともにまわっていた。 大変だった。 まだ私のキャリアは浅かったし、相手のピアニストはそこそこもう大家になりつつある人だったし。 英語もロクに話せない私がそんな仕事をしていること自体プレッシャー。 対等に仲良く音楽談義やら世間話をできる状態では全く、なかった。 毎日気が張り詰めていた。 毎日、移動スケジュールは問題ないか? アーティストの健康状態は大丈夫か? ちゃんと食事は確保できてるか? 頼んでおいた飲み物はちゃんとあるか? ホールのピアノは大丈夫か? 楽屋はちゃんとしているか? (これは事前打ち合わせを綿密にやっていても、行ってみたら「なんだこりゃー!」ということもままある。) 会場の音響はどうか?プログラムは届いているか? そしてホールの裏方さんやスタッフといい人間関係で、しっかり現場の作業が進められるか? とにかくコンサートをとどこおりなく終わらせなきゃ! 一瞬一瞬が勝負。気が抜けない。 あのツアーは1ヶ月も続いていたし、いい加減疲れていた。 ホント辛かった。 しかし救い、というかそれが全てなんだけど 彼はそれはそれは素晴らしいピアニストだったし その彼が毎回弾くシューベルトの小品がなにしろ美しく、 リハーサルは客席で聴き、本番は舞台袖で聴くそれが何よりの私の癒しだった。 それが昨晩すっかり頭の中から漏れ出し 体全体がその時の感覚でいっぱいになった。 音(それに私の場合は匂いだ。)は 本当に記憶の部屋をあけるカギだ。 ...
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