![]() |
ポリーニのこと、再び - 2004年05月11日(火) 先日のポリーニのコンサートの余韻がまだ冷めぬ。 話によると、昨日のオール・ショパン・リサイタルも とてつもなく素晴らしかったそうだ。 聴いた人間が 「あまりの音の、音楽の素晴らしさが眩しくて、目がくらむほどだった。」 と恍惚と電話で話してくれた。 いや、確かに素晴らしかった。 疑いなく、掛け値なし、現代最高のピアノだ。 その一方で、BBSにいつも色んなことを書いてくれるサマンサのダーリンが (彼らは北海道からわざわざポリーニを聴きに上京した!) 「こんなに美しくて良いのだろうか?自分はポリーニが本当に好きなのだろうか?」 と悩んでいたという。 これも面白い話だ。 しかしこう思うのもありえるかもしれない。 それほどポリーニのピアノ演奏は美しいのだ。 本当に凄絶なくらい(?)美しい。 私が聴いた日でいえば、 私もベートーヴェンの「第7ソナタ」があんなに美しい曲だったか? ホントにこんな曲だったか?美しすぎるんじゃないのか? とかなりビックリした。 でもそれはポリーニが悪いんじゃない。 今までのベートーヴェンが得意な一流ピアニストといえば 良くも悪くも、演奏の肌触りがゴツゴツしていて 悪戦苦闘しつつ勝利をつかむ音楽、(「運命交響曲」のように) 覇気満々で天衣無縫、汗水とばして血ヘドを吐く、 音の美しさを犠牲にしても精神の深さを尊ぶ、 みたいなベートーヴェン演奏が多かった。 私も含め、多くの音楽家、音楽ファンはそんな根強いイメージを持っている。 特にあの「第7ソナタ」、音大に行っていた人間はまず一回は勉強しているはずだ。 何をかくそう、私にとっても音大の受験曲だった。 私はハッキリ覚えているが、 あの曲はまさに汗水とばして、大興奮しながら弾くような音楽だった。 …でも、こないだのポリーニを聴くと この音楽にはいかに大胆で繊細な、 万華鏡のようにめくらめく移り変わるハーモニー、 こんなにもリズムの多彩な発展があったか! 楽譜にはちゃんとそれが見出せるハズなのに 私は何を見ていたのか、 と愕然とし、感動した。 超一級の天才というのは 音楽家に限らず、 私たちの思っても見ないところから 想像を絶するような「何か」を引き出してくる、という最高の実例。 それにしても私が知る限り、 ポリーニの出現以前にも 彼の後の若い世代にも ポリーニに似ているピアニストはまったくいない。 アルゲリッチやアシュケナージやブレンデルのようなタイプのピアニストは 探せば少しはいるが、 ポリーニはまったくオンリーワン・タイプだ。 音楽家よりもむしろ、 同国のイタリアは、あの彫刻家のミケランジェロが最も近いのではあるまいか。 ポリーニの音、音楽はそれほど彫塑的、建築的だ。 (彼のお父さんは建築家だそうだ) ...
|
![]() |
![]() |