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熱血青春日記(癒し系)
ゆう
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2005年08月21日(日)
星になった?

 今、自室にはグラスが二つ置いてある。氷がすっかり溶けてしまって、ほんの少し底に残ったアイスティーと混じり合っている。今まで彼女が部屋へ遊びに来ていたのです。

 寂しいというから連絡しなきゃなあと思っていて、日曜日ヒマかい? と送ったら、「予定はないよ。ところでさあ……」と別の話題に持っていかれる。意外にその話題に盛り上がって、メールを送ったきっかけなんか忘れて、じゃあおやすみ、と途切れたのだけど、二時間くらいして、ところで日曜日ヒマってなんだったの? と返信が来て焦る。少し脳が疲れているんじゃないのかなあ。


 知人から、彼女と行きなよ、と映画の無料券を二枚譲り受けていたので、せっかくだからと「星になった少年」という映画を観に行くことに。主人公の人、宣伝で見たことがあるだけで名前すら知らないから、ずっとタイ人か何かかと思ってた。物語が始まって、常盤貴子さんと流暢な日本語で会話するから、おお、こいつずいぶん日本語うめえなあと思いながら観てました。走り出したエンドロールで名前見て初めて日本人だったのね、と思う。いや、タイの人たちの並んでたとき違和感なかったって。人間って結局のところそんなに大きな差はなかったのだと思う。しかし、それにしては不自然なというか、カタい演技だったなあ? だから日本人に見えなかったんだよ。賞を貰ったというから期待していたんだけど、そこまで感動的な演技ではなかった気がしてならないが、しばらく芝居から離れているから僕の目が鈍ったんだろうか。
 星になった少年という映画自体はおもしろかったんだけど、二点不満なところがある。一点目は常盤貴子がどうしても母親に見えない。だって夫が高橋克巳だよ。で妻が常盤貴子? どうみても娘だろ、と思う(^^; 子供がいるようには決して見えないなあ。常盤貴子をもっとおばさんくさくするか、高橋克巳を若返らせるかしたほうがいいと思う。
 二点目はタイトル。「星」になってないじゃん。別に。物語中にも何故そのタイトルなのかということがひとつも出てこない。タイトルと内容がバラバラなのだ。あれはどうしても納得がいかない。「象になった少年」とでもすべきではないか。主題が星なんかじゃなくて、象だもの。自分が監督ならそうするな。

 まあなんにせよ、おもしろい映画でした。


 映画を観終わって、じゃあこれからどうしよう、と言うのでどこかそこらの喫茶店でも入ろうかと映画館を出る。アピアに喫茶店があったなと思って歩いている途中で急に彼女が立ち止まり、
「ゆうの部屋に行きたい」
と言い出す。前に小さい頃のおれは可愛かったんだぞという話をしたのだけど、その幼い頃の写真が見たいのだそうで。友達来て部屋で飲んでたから荒れてるし、めっちゃ汚れてるよと何度もクギを刺したけど行くと言って聞かず、結局そのまま自宅まで一緒に帰ることになる。いつもは一人で帰る道。小説を読みながら待つバス・ターミナルも、彼女がいるのはヘンな気分だ。

 ところがこんな日に限って珍しく両親が共に自宅で寛いでいる。普段は日曜日なんて飲み会だとかパチンコだとか言っていないクセに、何と言うタイミングなんだろう。玄関を開けて家に入ると、母は玄関左手にある自室でケツ掻きながらドラマを見ている。オヤジは台所に立って酒のつまみでも作るのか、なにやらせっせと作業をしている始末。帰ってきたのが不詳の息子だけではなく、彼女もいるということがわかると、とたんにお袋の「お愛想スイッチ」が入る。この変わり身の早さは見習わなければ。自分は事業所に社長でも来ない限りあまり態度が変わらない。

 とりあえず自室に通す。本と資料の山。友達が来たときに若干まとめたから床が見えている状態のときでまだよかったなと思う。足の踏み場だけはある。
 折り畳み式のテーブルを出し、まずはタコヤキを食べる。自宅に帰る途中、スーパーマーケットの駐車場を横切ると近道になるのだが、その駐車場に移動販売でたこやき屋が来ていたのだ。前に買ったときはなんだかマズかった記憶があるが、今日はとても美味しかった。ゆうが彼女連れてるぞと思って、おっちゃん気合い入れたんだろうか。
 たこやきを食べ終わると、壁に掛かっていた写真を外して彼女に見せる。1991年7月。小学校低学年だったはずで、野球の全国大会に兄(もどき)が出場するのを一家、というかニ家総出で東京まで応援に行ったときのもの。兄もどきってのは、本来はいとこなんだけどしばらく一緒に暮らしていたからもう本当の兄弟みたいなもんだったという意味。フクザツな家庭で育ったから説明が長くなるけど、要するにこの頃は従兄弟の一家と我が家が同居生活を送っていたのだ。
 たくさん並んでいる子供たちの中で、さあ、ゆうはどれだと問題を出すと、人の顔をまじまじと見ながら必死で探している。我ながら、14年も経てば人間跡形もなく変わるのだなあと、7歳の自分を見ながら20歳の自分は思う。
 どれだかわからないというので、一番小さいのがそうだと言うと彼女が驚く。えーっ、ゆうって昔は小さかったんだね、と再び14年前と後を見比べて、ゆうはこのまま成長すればかわいかったのにー、と言う。その7歳の可愛い子も、20歳になればこうなるんだよ。


 そんな事をしていると、親がピザ屋の出前を取ってやるから好きなのを二人で選べ、今日はおごりだ、とチラシを持ってくる。いやあ自宅にいると晩ご飯が出るって素敵ね。昼は映画を観る前にミスター・ドーナツで、僕はオールドファッションドーナツ、彼女はアップル・パイを一個食べたきりだったので、ありがたく奢られることにする。ピザに関しては二人の好みが共通している。パン・ピザは食べられないのだ。一切れ食べただけでお腹が一杯になってしまうのです。なので生地はクリスピー、具は彼女が「辛くないヤツ」と言うので、アイダホ・ポテト。

 ピザを注文して、届くまで彼女が人の長くなった髪を結んで「ゆうこりん」とか言って爆笑するのを為す術なく見てました。そんなにおもしろかったんだろうか。僕の漫談より笑っているので少々芸人魂が傷つきました。


 ノーメイクで恥ずかしいから、あんたら若いのは二階で仲良くお食べ、とか言って母親がピザを運んでくる。ピザだけじゃ足りないべ、と次はオヤジがポテトとナゲット、辛口チキンといったサイドメニューを運んでくると、飲み物何が良いかわからんから、と午後の紅茶レモンティーと、自宅で淹れた冷たい緑茶を持ってくる。この間の飲み会より豪華な卓上になったなあ。食べ終わる頃には腹がきつい。
 その後なんとなく部屋で寛いで時間が過ぎ、21時を廻ったので家まで送る。いつも大学から送るから50分くらい掛かっていたんだけど、家からなら20分程度で到着することが判明。実は家から大学行くよりも近かったんだ、と思う。
 そして家に戻ってからなんとなく眠れなくて書く日記。ああ、明日から忙しい日々が始まる。北海道の夏ももう、終わる。