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2005年12月08日(木) ■ |
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ラスボス |
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今日は実習の日。重症心身障害者施設で一日お手伝いという実習なのだ。 出発は12時と聞かされていたのが、当日になってなぜか20分の繰り下げ。 暇つぶしにいつもの通り、学生ホールのソファに埋もれて男軍団とうだうだしていると、先に我々が行く施設の実習を済ませてきたグループの人が来て、1Bクラスにボスがいる、と言う。なんでもその施設の長的存在で、気に入った学生の頭を叩くのだそうだ。 「ゆうちゃんもシャクティパット受けてきな」 とその男は言うので、俺がその施設のボスになったる、と意気込んで、送迎バスに乗る。
トイレ行きたい人は先に行ってくださいよ、と教授が言っていたんですが、バス乗る前にちゃんと行って来たから大丈夫だな、と思っていたんですが、隣の男のコカ・コーラを勝手にパクって飲んでいると、急に尿意を催す大惨事(駄) けど、施設に行くまで休憩ないしなあ、まあ、施設についたら一目散にトイレに逃げようと思って、めっちゃコーラを振ってから隣の男に返す。「もうお前にやるわそれ」と言われました。
で、施設到着。着くとすぐにまず全体で概要の解説を受け、自分の担当場所に配置される。何の運命か、自分の配属先は、例のシャクティパットおじさんがいる1Bでした。発表されたとき、一部の男子の忍び笑いが漏れる。運命。
では今指示された場所に移動してくださーい、と言われ、自分は1Bに連れて行かれる。いやあ、びびった。何がびびったってある意味牢屋みたいなんだもの。鍵が無ければ開かないデカイ扉をくぐりぬけ、中にガチャリと閉じ込められました。トイレいけねえよコレ。施設内にもトイレがあるんですが、利用者用なので、健常者が使うようには作られていないんですな。困った。 まあ、限界になったら施設の人に言ってトイレいこ、と思って、さっそく施設内に突入。入ったらすぐ、自閉症傾向があるというおじいちゃんが絵本を読んでくれるというので、そのおじいちゃんの所に行きました。ところが、絵本なんざろくに読まずに、「学生さん?」と連発して聞いてくる。何回も「はい、○○医大です」と根気強く答えておったのですが、あまりにも同じ質問を繰り返すので、訊きたいことと違うこと答えてるんじゃねえかと思って、若干回答を変えると、スムーズに話が通る。なあるほど。まあ、ちょっとした行き違いがあって最終的に自分の名前「医大くん」になりましたけど(駄) この絵本もってないの、と次に連発して聞いてくるので「持ってないです」ではなく、「お金がないので持ってないです」に変えると、「学生だから金ないのか」と反応が変わる。 「年金出ないんスよ(笑)」 といったら、ずいぶん気に入ったらしく 「医大は金ねえのか」 とやたら連発され、そこまで連発されると何やら腹立たしいなこのやろう、車も持ってるぞ、麻生十番のVIPだぞ(違)と言いたくなりましたが、穏やかなゆうさんは抑えました。
その後、何やらじいちゃんが全裸で走り回っていたり、どこも痛くないのに痛え痛え連発するじいちゃんがいたり、重度の障害を持ってベッドから起き上がれず、うんうん言っている方に「てめえ根性がたりねえ、根性が」とずっとキレてるじさまがいたり、じじいとは思えない超スピードで施設内を移動するプロがいたりと中々バラエティに富んだ方々がいらっしゃいましたが、シャクティパットおじさんは見つからず。 車椅子の方の着替えを介助した後は特にやることもなく、じいちゃんに囲まれてソファに座ってサボタージュしておると、さっき絵本を読んでくれた(くれようとした)人が 「花火やるんだ、花火、クリスマス花火」 と連発して教えてくれる。 「花火? 冬に花火なんてやるんですか」 と仲間の学生は不思議そうな顔をしていたんですが、別に花火くらいやるんじゃねえのと思っていたら、本当に中庭で花火が上がる。毎年恒例のイベントらしい。銀世界に浮かぶ花火は、なかなかに綺麗でした。花火のあとは木々のイルミネーションが点灯し、クリスマスムードになる。おお、すげえ。
しばしそのようにソファで実習サボった後は、 「早くカルピス飲ませ」 とキレるじさまに、カルピスなんてどこにもねえよ、と思っておったら実はポカリスエットのことであったとか、なかなか罠にはめられながら実習は進みます。 そろそろ限界だからトイレいこ、と思って職員さんを探していると、向こうからじさまが猛然と走ってきて 「ヘイ!」 と言って抱きついてきました。僕トイレいきたいんだけど、離してくれないかな。もれるんだけど。 しばらーくなすすべなくそのままにしていると、職員さんが見つけて 「すごい力だべ、このじいちゃん。誰にでもやるんだわ」 と、そのじさまの手をつかんで、柱のところに持っていく。すると標的は柱に変わりました。モロー反射…? うーん。
とりあえず悩んでる場合じゃないので鍵を開けてもらい、トイレにダッシュ。 やっと落ち着いたよ。これで本格的に実習ができるぞ、と思って自分の担当施設に戻ると、職員さんが言いました。 「ゆうちゃん、集合だって先生言ってたよ。お疲れ」 あふん( ̄Д ̄;;
実習先からは、 「学生はみんな始めて見る光景にビックリするんだけど、ゆう君はクールに受け入れてましたね」 と評価を頂く。うん。トイレのことしか頭にないからね。
そんなわけで、大学に帰って、ラスボス倒した? と訊く仲間に 「ボスは俺の膀胱だった」 と答えました。
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