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2005年12月17日(土) ■ |
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灯台元は暗けれど |
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自分の授業が終わったあとで、例の新人さんの研修。今日は担当が自分なので、英語の研修でした。新人さんは英語があまり得意ではない様子。テストはできるけど説明はできない、何せ暗記で乗り切ってきたから、とは本人の弁。 とりあえず、その例題だと日本語のほうに目的語がないから生徒が混乱するだの、導入の時は生徒のもともと持っている知識を前提にして、それだけでは解けない問題を出すことで、今自分に何の知識が足りないかを提示するほうがいいだの、黒板はこの線から分割して使うだの、人間の集中力はどれくらい持つと思いますか、ええ、90分ですか。あなたは天才ですね。常人は8秒ですよ、だから50分という講義時間の使い方がいかに大切か、どう時間配分するかが勝負だのと言いました。教案を書くときも、こういう図式があってね、教案は一本の線じゃなくて相互作用なんだよなどと一応講釈たれましたが、そんなん知らなくてもよろしいと小声で(駄) 思うに、この新人さんは相当の優等生なんだな。頭が良すぎるから生徒の目線に立つのが難しいのだろう。前に、「恋愛は教科書通りに行かないなあ」と言いながら『女の子の口説き方』などという本を読んでおるたわけた東大生がいましたが、頭が並外れて良すぎると、なんでも知識優先になるんだな。知っていることと出来ることは違うのだ。だから、「僕と君」というより「僕たち」と言う方が無意識に好感を伝える方法なんだ、などと訳のわからぬことを言い出し、「我々はー」などと会話の中で連発するようなやつになる。おまえは軍隊かと。知識が100%で、経験からのフィードバックがないのである。
だから勉強っていう今のシステムがおかしいんだよ。さっきみたいな男を大量生産しているだけなんだ。 特に我々のような学問では、「知っている」=「治療できる」と思いやすい。無知は人を殺すと医療業界では言うけれど、「知」の考え方が根本的に間違っておる。勉強は「目的」ではなく、「手段」だ。 灯台元暗しと言うけれど、子供のうちは足元なぞ見なくてもよろしい。目標だけ見てりゃあ、勝手にどこまででも飛んでいくのが子供なんだから、足元など気にしている暇があったら一歩でも前進しやがれコノヤロウ、ってなもんである。100点なんか取らなくてもいいんだよ。
だから、僕はあえて単位を落とすんだよ、教授。
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