詩のような 世界

目次


2002年02月16日(土) 祈り



疲れた目をこすりながら

少女は地面に座り込んで

スカートに泥がつくのもかまわずに

待っていました

狼の群れを



銀の毛を揺らしながら

もうすぐやってくるというのに

笑いすらこみ上げてくる月の夜



間違ってるこんなこと

少女は舌打ちしたのだけど

立ち上がる気力すらなくて



どこからか聞こえる長い遠吠え

耳の奥から左胸へと落ちてくる

共鳴しそうになる口を慌てて塞いだ



金の巻き毛に結んだ細いリボン

そっとひっぱり取って投げた

まるで覚悟を決めるかのように



本当に欲しかったものは

生まれたばかりの雛を見守るような

優しい暖かさ



でも少女には

祈りを口に出すことが

あまりにも難しすぎたのです






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