詩のような 世界

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2002年05月05日(日) 永遠のオブジェ


腰まで伸ばした銅色の髪の毛が
洗い場の排水溝に流れていく様を
彼女は目で追っていました

赤い小さな唇の端で小さく笑い
彼女のチャーム-ポイントであるフワフワの髪を
一本づつ抜き取っては捨て抜き取っては捨て
流れろ
流れちゃえ
呪文のように
彼女は繰り返すのです

シャワーを浴びると
白い肌を水滴が伝っていく
彼女は冷たい目でそれを見ながら
手の甲に歯を立てました
嫌い
嫌い
消えろ
消えちゃえ

そんな痛々しい姿さえ
誰の目にも「女神」として映るでしょう
輝くたおやかな長い髪は白い身体を包み込み
光を失った茶色い瞳は
飾られるべき芸術作品並に人を魅了してしまうから

女神の気持ちなど
誰も知らない
圧倒され盲目になった人々は
知る術を持たないのです

可愛そうな女神
永遠のオブジェ




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