詩のような 世界

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2002年07月09日(火) 「餌を頂戴」



自販機の横に
銀色の小犬が丸まっている
あたしは
あの人の細い眼鏡を思い浮かべた

銀色の塊は無垢な瞳を二つ輝かせ
あたしを見ているようで見ていない

丁度良かった
あたしはラッキーと大声で言って
カバンから湿気たビスケットを出し

出しかけてまた戻した
やめた
小犬はいつの間にか足元まで来ていて
期待はずれの表情を露骨に表す

あたしは小犬が可愛いけれど
その貪欲さに恐怖に似たものを覚えた

餌を頂戴
餌を頂戴

あげなければあなたは去っていくの?

小犬を抱き上げ
頭を強引に撫でる
指を噛まれたけれど
滲み出た血は小犬が舐め取ってくれた

そう、舐め取ってくれた





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