詩のような 世界
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自販機の横に 銀色の小犬が丸まっている あたしは あの人の細い眼鏡を思い浮かべた
銀色の塊は無垢な瞳を二つ輝かせ あたしを見ているようで見ていない
丁度良かった あたしはラッキーと大声で言って カバンから湿気たビスケットを出し
出しかけてまた戻した やめた 小犬はいつの間にか足元まで来ていて 期待はずれの表情を露骨に表す
あたしは小犬が可愛いけれど その貪欲さに恐怖に似たものを覚えた
餌を頂戴 餌を頂戴
あげなければあなたは去っていくの?
小犬を抱き上げ 頭を強引に撫でる 指を噛まれたけれど 滲み出た血は小犬が舐め取ってくれた
そう、舐め取ってくれた
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