狭 い 行 動 範 囲

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★短編小説3 - 2003年06月29日(日)




[次の目覚めには。]


目が覚める。
自分の起きたいと言う意思とは裏腹に、突然目が覚める。
それは、世間がまだ寝静まってる時間で。
それでも太陽はもう空を白く彩らせている、そんな時間。
何時かは定かじゃないが、桜木の家の窓から漏れ出す淡い太陽の白い光と、白く染まる空の様子で、それが早朝だということを俺に知らせていた。


俺は桜木の家の匂いが染み付いた、この布団に包まって、窓を見ていた。
意識もハッキリしてなくて、ただなにも考えずに外を見ている。
今が朝なのか昼なのか、それとも夜なのか。
それを知るだけで他になにも必要ない時間。
この時間が好きだと思う。



意識は、窓の外を見ているうちにハッキリとしてくる。
まだ寝たいという意思がうっすらと残っているが、周りに意識が行くようになると、そんな意思もどこかへ消えてしまった。
気付くと、隣に寝ていた桜木がいなくなっていた。




アイツは一体どこにいるのか。
ぼーっとした頭で、それとなく考えてみる。



トイレに行ったのか。
でも家には人の気配がない。



そういえば、布団がきっちり畳まれていることに気が付く。
この家にいないのは確かだという事が、寝ぼけた頭に入ってくる。




昨日喧嘩して、お互いに不貞寝した。
本当に下らない、些細なことだと俺は思っている。
夜の事も、朝になれば気持ちが冷めてしまう。
だからあんなに怒った昨日も、いまでは下らない事の様に思えて仕方なかった。

でも、もしかしたらアイツは、俺の事が嫌になって出て行ったのかも。






アイツは一体どこに行ったんだ。



こんな時間に買い物とか。
…まさか。こんな時間に。





ぼーっと窓の外を見ながら考えていたが、次第に瞼が重たくなっていくのが分かった。
眠気が襲ってくれば、何があろうとそっちを尊重してしまう。
桜木がどこにいるのか分からなくて、それでも眠る事を優先させている自分はどうかと思った。



だけど。
よくは分からないけれど。


桜木はちゃんとこの家に帰ってくるような気がした。




もしかしたら、俺を置いて出て行ってしまったのかもしれない。
アイツなら、そんな行動を起こしても変じゃない。
アイツはいつも、自分の感情を押さえつけるだけ押さえつけてるから、だから限界が来た時には、俺をこの家に一人置いて、出て行ってしまう事だってあるかもしれない。



だけど俺は、アイツを心のどこかで信じているところがある。
アイツならいつかは帰ってきてくれる。
必ず帰ってきてくれる。


そんな曖昧なことに確信を抱いている。
自分を信じているし、アイツを信じているから。
だからこんなことを思えるのかもしれない。







結局俺は、眠気に負けて、その重たい瞼を閉じた。





次に目が覚めた時には、窓からは青い空が見えていて。
桜木の鼻歌が聞こえて。
アイツの作る飯の匂いがして。

うるせぇ声で、怒鳴りながら俺を起こして。


嬉しそうな桜木の笑顔が見られますように。










end




久しぶりに時間もあったし、小説の内容がホントに久々に浮んだので、書いてみました。
でもイメージしていたものが半分も出せていません…。アウチ。



この話し、私の半分実体験から。
私は、陽がやっと登り始めたくらいの時間に目が覚めるのが好きです。
朝焼けを、あったかい布団の中で見るのが好き。
あと、朝起きて誰も家にいない時に「あれ?」って思う感覚も好きなんです。
この間、起きたら家に誰もいなくてビックリしました。
だけど、必ず家に帰ってきてくれる人がいるから、その感覚が好きなんだと思います。
必ず帰ってきてくれる人がいるから、ビックリするだけで、心配したり不安になったりしないでしょ。
でも、何度目が覚めても、帰ってきてくれるはずの人が帰って来なかったら、やっぱり不安だし心配だし、悲しい。


うちの流川さんには、花がちゃんと家に帰ってきてくれるっていう確信があるみたいです。
そんな確信は、相当な愛が無いと無理ですね。



...

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