TENSEI塵語

2001年12月08日(土) 「天使のくれた時間」を見た

久々にケチつけようのない映画を見た。「千と千尋」以来の感服。
昨夜、見かけて中断していた「ロンバケ」の第10回の途中から最後まで、
智ちゃんの南ちゃんの芸術品ぶりを再認識しながら見て、
それから夜中になったらふとこの映画を見たくなって見てしまったのである。

木曜日にタイヤの交換に車屋に行って、そこを出てからその近所の、
いつも立ち寄るCD屋に寄ったのだ。
「天使のくれた時間」は、CD屋でもらったパンフを読んで、
そのうちまずレンタルで借りて見ようとは思っていたけれど、
CD屋でDVDの実物を見たら、えーい買っちゃえ、と
半ば衝動買いになってしまったのだった。
買って帰っても「ロンバケ」に心を奪われてしまっているので、
いつ見ることになるのかわからないでいたけれど、
ふと例のパンフが目に止まって、不意に見てみようという気持ちに襲われたのだ。

もちろん、テーマに特に惹かれたわけではない。
恋人や妻との愛を大切にするとか、家族愛に目覚めるとか、
そんなテーマの物語だったらうんざりするほどある。
それよりも、それをいかに表現しているかである。
この映画では、主人公にもうひとつの人生を体験させることによって表現している。
この主人公の場合だと、もしも13年前恋人を捨てずに結婚していたら、
彼の人生はどうなっていただろう、ということである。

ウォール街で大手金融会社を営み、リッチでゴージャスな生活に満足するジャックの
もうひとつの人生とは、そういう人生を求めて13年前に別れた恋人
ケイトとの、つつましい平凡な家庭生活だった。
天使の魔法(?)によっていきなりその生活の中に放り込まれたジャックは、
それまでの地位・名誉・財力を奪われまいと、じたばたする。
けれども、彼は何を確かめても、妻の父のタイヤ店のセールスマンでしかなく、
ケイトの夫でしかなく、2児の父親でしかない。

この長女がまずなかなか、、である。
おむつをかえるのにてこずるジャックを見て「パパじゃない」と気づき、
エイリアンだと思い込んで、うまくやれるように指南する。
最後の日の朝には雪の中で戯れて、「パパだ」と言ってかわいく笑う。。。

ジャックもこの生活に半ばあきらめつつも馴染んできたのだろうが、
地位と金への執着はなかなか捨てられない。
タイヤ店に、現実のジャックが経営する会社の会長が来店したのをきっかけに、
ウォール街で働けるように自身を売り込み、実現しそうになる。
たぶん、もうここでは家族をも喜ばせたいと思っているはずである。
ところが、ジャックの転職と市街地への居住についてケイトは反対する。
彼女は、郊外でのつつましい生活のよさを訴える。

けれども、ある晩ケイトは語る。・・・ここでの暮らしを続けたいけれど、
市街地へ行くのならそれでもいい、あなたを愛してるから、
それが1番大切だから、あなたを選ぶ。。。
・・・そう、この「もうひとつの人生」でのジャックは、13年前、
ロンドンに旅立った翌日にケイトのもとへ引き返してきたのである。
将来の大きな夢よりも、ケイトを選んで結婚したのである。

岩塩を買いにコンビニに行ったジャックは、レジで〈天使〉に出会う。
ジャックは、この生活を終わらせないで欲しい、と訴えるが、
〈天使〉は「きらめきは一瞬だ」といって、終わりの予告をする。

現実の世界に戻されたジャックは、郊外のあの家に行ってみるが、
案の定他人が住んでいる。
(あちらの世界に行ったときも、マンションや会社に行って追い返されている。
 同じことをしているわけである。が、さすがに今度は察しがついている)
ビジネスの方はとんでもないことになっているが、彼にはもう興味がない。
大切なものを失ったという喪失感だけが彼の心を支配している。

彼はケイトを訪ねる。高給取りの弁護士として活躍していて、
パリの事務所に引っ越すためにてんてこ舞いをしている。
求婚めいたことを口にしてみるが、ケイトは軽くあしらってしまう。
けれども、ジャックはやむにやまれず空港に駆けつける。
そして、ゲイトをくぐる寸前のケイトをお茶に誘う。ケイトはここでも軽くあしらう。
ジャックはあきらめきれない。・・そして、驚いたことに、
あの世界の家族のことを語り始めるのである。
ケイトは不思議そうな顔でそれを聞いている、、、ところが、しだいに、
ただならぬジャックの思いに、かつて自分が願っていたものを思い出したのか、
潤んだ目でジャックの言葉に耳を傾ける。
ジャックは、今ケイトが去ったらすべては消えてしまう、
飛行機に乗るのをやめて、僕とお茶を飲もう、と訴える。
13年前のジャックは、ケイトの思いを振り切って飛行機に乗ったのだった。
けれども、ケイトは「OK、ジャック」と答える。この上なく魅力的な笑顔で。。。

エンディングは、喫茶室で談笑する2人。。。
このひとときも、天使のくれた時間、なのである。
そして・・・?? ・・たぶん。。。。。。


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