まだ終わりではなかった。 妻の小学校の卒業式の、証書授与の際のBGMを相談されたのである。 実に難しい注文で、弦楽合奏を主体としたもの、ゆったりした曲、 あんまり極端な変化があってはいけないし、盛り上がりすぎてもいけない、 耳を刺激するような音色が使われていてはいけない、、、20分くらい。 証書授与は、担任がひとりひとりの名前を呼び続ける中で、 流れ作業のように全員がステージに上がって校長から証書を受け取るのだという。
そんな条件に適った曲は、そうありはしない。 しかも、聞こえてくる分には、とにかくいいメロディーをもってなきゃいけない。 先日の卒業式の送辞・答辞で使った3曲のうちの2曲を使えばいいことはすぐにわかった。 けれども、それでは7分ちょっとにしかならないのである。 その2曲を3回くり返してもいいのだが、それは最後の手段ということにして、 ここでまた新しく曲を発掘しようとするところが私の悪いクセである。
で、日向敏文のサントラオムニバス(レンタルで借りたもの)や、 加古隆のCDや「IMAGE」などのCDをまたもや聞き返す。 そうして、3曲見つけて妻に具申して、2曲が採用になった。 他人事とはいえ、これでも実に疲れる仕事である。
曲探ししながら、加古隆の「白梅抄」やパールマンの弾く「シンドラーのリスト」が 聞こえてくると、涙ながらに聞き込んでしまう。 こういう感情が極度に表れた曲は儀式にふさわしくないのが残念だ。 あまり深刻ぶった曲は、やっぱりBGMにはまずいのである。
「菊次郎の夏」の「The Rain」と題された曲を卒業式の入場に使ったのは、 この曲が、なんとなく、そこはかとなく、「母の愛」という感じをもたらすからである。 包み込むような、優しく見守るような、そんなイメージが曲に漂っているからである。 ある日、無性に腹立たしかったときに、この曲を耳にしたら、 すーーっと、腹立たしい思いが引いていったという体験がある。 こんな穏やかな温かい心で、卒業式を迎えてほしいな、という思いで、 (そしてそれだけでなく、母親や家族に感謝しつつ、、、) 去年に引き続き、この曲を入場の曲に選んだのである。
吹奏楽部がまだ盛んで、卒業式で演奏していたころは、 X(Yoshiki のグループ)のバラード系の曲を苦心して編曲して演奏していた。 あれも懐かしい思い出になっている。
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