一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
目 次|過 去|未 来
その14
足長さんは、私にこっちに来て座るように、椅子を出して指差した・・・ 終戦直後、彼は、どさくさに身を隠し息を殺しながら、人ごみの多い汽車に乗り関西に来たそうです、 尼崎の駅に降りてたのは労働者が多い街だったからで、最初は屋台で商売をしていたそうです・・・ 幾らかの小金を貯めて、今のマージャン屋を始めたそうです・・・
その間、名前も年齢も隠して、20数年、地を這うように身を隠し、生きてきたそうです・・・
「これを見てみますか・・・」と、・・・・足長さんは私に両手首をみせた、・・・(本当にビックリした!)
たしかに切った後がしっかり残ってた!初めて見たこともあって息を呑んだ!言葉が出なかった!
「関西に逃れて来る時に、なもない小さな駅に降りたんだ・・・」
「駅を降りて歩いてたら、お坊さんに声をかけられ、そのままお寺にお世話になった」
そのお寺でしばらく掃除ばっかりさせられたそうです・・・少しずつ心も洗われて・・・ 身を隠し息を殺した生活から、始めてそのお坊さんに自分のことを打ち明けたそうです すると・・・お坊さんが言ったそうです!
「そのままでいいから生きなさい!そして・・一日、一人、相手の身になってゆっくりと話を聞いて下さい」
「自分で命を絶てば、必ずあの世でも、逃げ待とう日々が、必ずきます!」
足長さんは20年間と言うもの、出来るだけゆっくりと相手の話しをきくようになったそうです、
また・・・今度!
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