一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
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その24
クリスマス・イブ・・・
朝からバタバタした!商店街を抜けた所に、足長さんのマージャン屋よりも3倍ほど大きなマージャン屋さんからオムライス50個!の配達があり、一枚一枚運ぶのも大変なので オヒツのデッカイのに入れて、お皿を五十枚、持って、あとは、そのマージャン屋さんに行って注いで渡す!いちいち運ぶ思いをすれば、こっちの方が早くて楽でした・・・
50個のオムライスも注ぎ終わったら3人前ほど残り、帰りに足長さんの所で食べてもらおうと・・・店に持って行ったら・・・足長さんが灯りも点けづ椅子に座ってた・・・
薄暗い店の中から、足長さんは、私に一枚の手紙を渡しながら・・・
「朝、起きて、二階の見習いさんにコーヒーでも入れてあげようと階段を上がって見たら 居なくて・・・枕元にお礼の手紙が3通おいてあってね・・」
足長さんは、自分えの手紙をよんだせいか・・・目が潤んでて・・・
私はオムライスだけを店に置き、忙しい店へ飛んで帰った・・・
休息の時間に彼女からの手紙を読んだ・・・
「わたしは・・・やっぱり丹後に帰ります・・・ありがとうございました・・・ 小さい頃から髪を触るのが好きで、いつも夕方になると、お婆ちゃんの髪に櫛を通して ました、するといつもお婆ちゃんが、卒業したら、ちゃんと修行してパーマ屋さんにな
るといいよって!私は早く一人前になってお婆ちゃんの髪を結ってやりたいと・・・
思ってました、自分の思うようにはならないものなんですね・・・私は途中で挫折した
けど、貴方はがんばって自分の店を持ってください!いつも・・・星をみて・・・
祈っています。それから・・・あの親分さんにも、よろしくお伝えください・・・
メンソレタームはもう、いらなくなりました、よかったら使ってください・・・」
店の3階は倉庫になってて、大きなメリケン粉の袋の横で泣いたのを憶えています・・・
やっと仕事も終え、夜中の一時頃・・・外は沢山の三角帽子を頭にかぶった酔っ払いが、
手にケーキを持って、次なる店へフラフラ〜フラフラ〜
洗い物でびっしょり濡れたコックコートを絞りながら、一番!輝いてる星に・・・
メリークリスマス!がんばれー!って叫んだ事がありました・・・
もちろん・・・30年、前のことです・・・
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