一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
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その45
最後の言葉が
「あの世でも、また大会にでも出るか!」と、言ったそうです。
大将が涙ながらに、おやじらしい生き方だったなあーとしみじみ思いに更けた夜でした。そして・・・。
「さあ!みんな、おやじの為にも頑張ってほしい!大会まであと10日や!」
今でも憶えてるのは、部屋のなかに、お父さんのトロフィーがたくさん飾られていたことです。
大将はこのお父さんの名前が書かれたトロフィーをずーっとみて育ったんだと思ったら何故か胸がつまった。
たしか・・・大阪府立体育館だったと思います、日曜日なので私は店が忙しく見に行くことができず・・・。
くやしい思いをしたのを覚えています。
その大会があった夜、店が終わるのが待ちどおしく、終わったらすぐに自転車で飛んで行きました。
みんな大将を囲むように集まっていました。決勝の8人の中には残ってたらしく、最後にステージに上がった時、みんなの筋肉を見たとき、アカン!これは勝負にならんと、思ったらしい。
8人中、8位だったそうです。これだけ差があれば本人もサバサバしてて、笑いながらの報告でした、
大将が大会の式場をあとにして帰るとき、今回優勝した方に呼び止められ
「あのー失礼ですけど今度、線香をあげに家のほうへ伺ってもいいでしょうか・・・」
「実はあなたのお父さんには私がスランプに陥ってた時、親身になって、相談にのってくれました!」
「今日の優勝も、お父さんのお蔭なんです、いっしょに喜びたかったんです!」と、涙ぐんでいたそうです。
そんな話を、みんなにしてる大将も、涙・涙でした・・・。
次の夜、大将から電話があり、久しぶりにあの、赤い焼きそばの注文です・・・。
なかなかあかない戸を開けて、「まいどー一平でーす!赤い焼きそばでーす!」
大将はベンチプレスで練習してる若い男の子をつかまえて、
「あかん!あかんで!筋肉は一枚一枚、重ねていくんや!無理して重たいのを上げてもコワラルだけや!」
「下地が大事なんや!焦ったらあかんでー!」
私は、そーっと赤い焼きそばを置いて、大将の横をすれ違うとき、思いました、声までそっくりになりましたね!
またこの次
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