2001年05月20日(日) |
文明の機器に振り回される我等。 |
というわけで、祝「なこの様復活記念」勝手に小説一弾!(笑) 朔夜妖怪伝パロ。その後の彼ら。(笑) パロなんで設定はかなり無視です。
ネタばれなので見てない人は気を付けてください。!!
しあわせのカタチ
「太郎・・・?太郎・・・?・・・・どこに行ったのだ・・・?」朔夜は榊家の廊下を渡る。あの戦いから既に半月程がたっていた。あの頃初々しい少女だった朔夜も、今は年相応の美しさを身にまとい、「神剣」となりし村正を振るうことも無くなったが、それでも頼まれ近辺の妖怪退治をすることもあった。もっとも、ただ今ではその後継である、太郎に村正を譲って自らが最前線に出ることも少ない。 妖剣村正は、それを使う者の命を奪う。だからこそ、朔夜の父は魂を吸い取られ、死んでいった。 そして________。 自らが殺した河童の妖怪、その子供太郎を傍らに弟として置くことになった。 その太郎も、3ヵ月で子供の姿に成長し、今では朔夜と同じか、あるいはそれ以上の姿に成長した。妖術もかなり使えるようになり、今ではほとんど人間と変わらない外見を創り出している。
「姉上、どうしたのですか?そのようにしては、ほれ、その水辺のモノが足音にびくついておりますぞ。」 声は庭の木から。 渡殿から見あげれば、木の上に太郎は腰掛けていた。水辺というのは、昨夜の雨で出来た水溜まりにいる弱い水妖のことであろう。 「太郎、先程殿様からお前に褒美をいただいてな。良い布なのでそなたに合うであろうと思ったのだが・・・・最近そなたは成長が早いから寸法をはからなければならぬそうだ。来てくれ。」朔夜は用件だけ言う。それは、口数少ないこの少女のいつものことなのだが、太郎にはそれが気に入らなかった。 「・・・・はい。姉上。」太郎はそれでも朔夜の前に軽く跳躍して口元に笑みをたたえる。 「・・・・何だ?早よういかぬか。」 「へいへい。参りますよ。」太郎はどたどたと廊下を歩いて行く。 朔夜はその姿を見ながら、困惑した。 どうも最近太郎の姿がおかしい。言動は・・・それは年相応のものなのだが、何か、そう何か私に隠しているような・・・・。朔夜はその後に続いた。
「へぇえええ。まあた殿様も随分と貢いでくださることで。」 「まぁ、そんな事を申されてはなりませぬ、太郎様。これも一重に朔夜様へのご寵愛の深さ故。」 「知ってるよ。あいつの姉上を見る目は違うからな。」 「ええ。でも、朔夜様、お美しくおなりですもの。仕方ございません。」 「姉上は、姉上なんだけどなぁ。相変わらず、妖怪もビックリ、村正持ってなくても俺は姉上が一番怖い。」 「ま、太郎様ったら・・・!」 体にあわせ布の寸法を図っているのを朔夜は離れた位置から眺めた。 確かに、太郎は変わった。いつも自分の後ろを付いてくる小さな子供が、いつのまにか、自らを見下ろすようになった。その美丈夫のおかげか、榊家の護身グッズは飛ぶように売れている___もちろん、若い婦女子に。 朔夜は何故だか、軽く苛立ちを覚え、その場を去った。
「でも、ご結婚はなさいませんのって、朔夜様にお伺いしましたのよ、私。」 「・・・・姉上は、何て?」 「・・・ふふ、ご自分にはまだ手のかかる弟がいるから、そんなことは考えられない、と。・・・・ですが、いずれはお城に上がられるのではないでしょうか。朔夜様程の方ですもの、殿様がご所望なのも、無理はございませんわ。」 「・・・・・・ふぅん?俺ってそんなに頼りないのかな?」 「・・・・い、いえ、そんなことは・・・。そうではありませんよ・・・。」
その夜、太郎は姉の部屋を訪れた。御簾をあげ、月を眺めている朔夜の姿は、華が匂うように美しかった。 「姉上・・・・。」 「・・・太郎か、どうした・・・?」 「眠れなくて・・・・」 「・・・そうか。姿はそれでも、太郎は太郎だな。」朔夜はくすり、と笑う。 「・・・・姉上は、あいつに嫁ぐのですか・・・?」太郎は、朔夜の前に座り、言う。 「・・・殿のことか・・・?」 「・・・・・・俺の・・・わたくしの事なら心配しないで・・・ただ、姉上が、」 「わたしが・・・・?」 「姉上が殿を好いておられるのならば・・・どうなのです!?お応えください。」 「・・・・・殿には何かと世話になっておる・・・・。それが、単なる親切だけでもないこともわかっている。」 「姉上!!」 「・・・・・・・心配するな。太郎。我が村正をお前に譲ったとて、この榊の家にはいつまでも手のかかる子供が居るからな。そうそうおとなしく嫁などいけはせぬよ。」 「・・・・・子供って・・・わたくしのことですかっ。」 「・・・他に誰が居る?いくら、姿ばかりが先走ろうと、お前がこの世に生を受けて一年もたっていない・・・赤子とどう違うというのだ?」 「・・・わたくしはっ。わたくしは姉上を守ります!!」太郎が朔夜を抱きしめる。 「・・・太郎!?」 「・・・・その為の腕です。この体も・・・人とは異なるものも、全て、姉上の為にあります。赤子・・・とおっしゃいましたが、では、姉上、妖怪も人と成長を同じくすると、何故おわかりに・・・?」 「・・・・・離しなさい。太郎、それではお前が哀れだ。私の為などに生きることはない。お前はお前の、生き方があるはず・・・・。」 「・・・・・・姉上を守ることが俺の幸せです。」 「しかし・・・。」 「朔夜。」 「・・・・・・・・・・・・・・馬鹿者。お前など、私の後をついてくる子供ではないか。私は姿に惑わされる他の女とは違うぞ。」 「存じています。姉上も、妖怪討伐師の姉上も、そうでない姉上も、全て、私が守ります。」あの戦いで、決めた一つの決意。 「・・・・・・・河童。」 「はい。」 「・・・・・・ほんとうに、馬鹿だな、お前は。私は年をとる。そして、いつか死ぬ。」 「そうですね。でも、俺の寿命は村正に随分と費やしてしまったから、姉上と同じくらいには死ねるでしょうね。俺も妖怪ですが、年をとりますから、同じでしょう。いいや、成長が早い分俺の方が先に爺になります。」 「・・・・・・太郎は、太郎だ。それが爺でもな。」 「・・・・・では、姉上、ずっとお側にいてもよろしいですか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・本当に、馬鹿だ、お前は。」 朔夜は太郎の背を抱きしめた。
それが、恋なのか、哀れみなのかは、まだ少女が知るところではない。
END
あとがき。 やってしまいましたよ。 もうちょっと書きたかったのですが、時間が無いのでここまで!!! いや、朔夜伝についても、また別の機会に!!タイームリミット!!! では〜!!!
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