永遠に結ばれない - 2001年04月28日(土) 彼女が一緒だったらどうしよう? そう思いながらおそるおそる電話をかけた。結局かけた。「ただいま電話に出られません。メッセージを・・・」。携帯の機械音が流れる。しかたなく受話器を置いた。取ってくれないのかな。やっぱり彼女が一緒なのかな。どうしよう? もうほんとに声が聞けないのかな。 電話が鳴った。「もしもし? さっきかけてくれた? ごめん、出られなかった。今、かけ直せる? いい?」。携帯から国際電話はかけられないから、いつもあの人は公衆電話からかけてくれる。そしてわたしがかけ直す。 「昨日電話くれなかった。なんで? どういうこと? ほんとにもうかけてくれないの? もう電話しないほうがいい?」 「昨日はそう思ったの。でも・・・」 「でも?」 「・・・・。かけちゃった。・・・あなたは? あなたはどう思ってるの? どうすればいいと思ってる?」 「いけないことだと僕も思ってる。頭ではわかってる。でも電話したい。きみと話したい。」 「じゃあ、電話する。」 「意志弱いなあ。はは。」 「ふふ。ちがうの。」 「何が?」 違うの。昨日思ったの。自分に素直になろうって。声が聞きたいのにがまんしながら、あなたがもうすぐ結婚して、そしたらもういままでみたいに電話もできなくなって、だんだんあなたがわたしから離れていっちゃうこと考えて苦しむよりね、そう考えながらでも話したいんだからこのまま今までどおりに電話してるときっとそのうち・・・。「・・・苦しい気持ちに慣れちゃうってこと?」。 違うの。きっとそのうちだんだん、あなたがその人と一緒に暮らすようになることもちゃんと受け止められるようになる。あなたとおしゃべりしながら、もうすぐ遠くにいっちゃうんだって だんだん覚悟できるようになる。それでね、あなたが結婚するときにはね、・・・ちゃんとお祝いしてあげるから。そうしたいから。 あの人が声にならない声を漏らした。「・・・ねえ、火曜日の朝電話して。これから仕事なんだ。絶対電話して。待ってるから。」 きみはこれから寝るの? ううん。まだ寝ないよ、明日試験だもん。そっか、そうだったね。頑張ってって言って。うん、頑張ってね。ほんとに頑張るんだよ。ちゃんと耳に受話器くっつけてごらん。ーそしていつもみたいにキスしてくれた。「ほんとに電話してよ。」「わたしと電話したい?」「したい。」「じゃあする。」「絶対だよ。じゃあね。」電話が切れた。 いい子になったんじゃない。それはほんとの気持ち。きっとわたしの本当の気持ち。あなたに幸せになってほしいから。だってわたしとは幸せになれないんだもの。こんなに離れて暮らしてて、こんなに年だって離れてる。わたしが別居中の夫とちゃんと離婚したって、あなたがその人と結婚しなくたって、わたしとあなたは永遠に結ばれることはない。きっと。 火曜日までまだ3日もある。週末は彼女と過ごすんだ。日本は月曜日もお休みだものね。わたし、耐えられるかな、火曜日まで。またもとに戻るかもしれない。「もう電話しない」って・・・。 -
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