記念日 - 2001年05月07日(月) 「もしもし? おはよう。起きてた?」 「・・・おはよ。起きてたよ。っていうか、寝てない。」 「・・・寝てないの?」 「うん。遠足の前の晩の子どもと一緒。寝られなかった。」 「一晩中Hしてたのかと思った。」 「ばか。違うよ。」 今日はあの人がアメリカに出発する日。「きみと同じ大地を踏みしめようじゃないか」なんてバカ言ってたね。あの人がアメリカに来る。会えるわけじゃないけど、うんと近づける。時差が3時間しかないところにあの人がいてくれる。 「初めて会ったときも、前の晩寝てないって言ってた。」 「そうだよ。嬉しいことがある日の前の晩は寝られないもん。」 「嬉しいの? アメリカ来るの。」 「嬉しいよ。きみのいる国に行くんだよ。」 「ふふ。」 「電話するからね。日付もおんなじになるね。おんなじ日にいられるんだよ。時差だって気にしなくていいし。」 「3時間あるんだよ、時差。」 「3時間なんて、ないも同じだよ。日本に離れてること思えば。」 今日は嬉しいこといっぱい言ってくれる。結婚のことを聞かされる前に戻ったみたい。だからわたしも素直になれる。いい子になれる。・・・それに、彼女と一緒に過ごしてるとこ想像して泣かなくてもいいんだもの。たった10日だけど、あの人が彼女と離れるんだもの。・・・わたしって嫌な女かな。・・・10日経ったらまた苦しむかもしれないけど。10日の間も、今ごろ彼女を想って淋しいのかな、なんて考えちゃうかもしれないけど。でもよそう。あの人がアメリカにいる間は、たとえ会えなくてもわたしだけのものって思っていよう。 「なんかあった時も電話していい?」 「いいよ。いつでも電話して。夜中だって平気だよ。助けてあげるから。」 「うん。わかった。じゃあ行ってくるね。」 「行ってらっしゃい。気をつけてね。」 「あ・・・待って。」 「・・・?」 「・・・。」 「わかった。・・・いい?」 そう言って、いっぱいキスしてくれた。 「しつこかった?」 なんて今日は優しいんだろう。自分も優しくなっていくのがわかる。心が穏やかになっていく。こんな気分、久しぶりだ。 10分経って、思い出した。もう一度電話をかけてみる。もう行っちゃったかな。 「もしもし?」 「どうしたの?」 「さっき、言い忘れたの。」 「何?」 「今日、何の日か知ってる?」 「・・・。ちょうど一年の日。・・・だろ?」 「そう。それだけ言いたかったの。」 覚えててくれた。 「おめでとう。・・・記念日だからね。」 「ふふ。」 おめでとうって言うのかな、こういう時。 「危なかったよ。もう携帯置いて、出るとこだった。」 「じゃあね。」 「うん。」 よかった。ちゃんと素敵な記念日になった。 もうずっと、こんな日が続けばいいのに。 今日は泣かない。今日は眠ろう。一年前と同じ幸せ抱えて、今日はいっぱい眠ろう。 -
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