抱かれたい気持ち - 2001年05月10日(木) 夜中の二時ごろに電話が鳴った。あの人? ベルが2回鳴るのを待って受話器を取る。「もしもし」。・・・夫の声だった。体調がよくないと言った。心配になる。こういう時にはやっぱり心配する。彼の病気のためにわたしは今の職を選んだんだった。ずっとわたしがついていてあげよう、そばにいて病気を助けてあげようって。一から勉強を始めて長い長い時間をかけて、やっと正規の資格が取れるというのに、その長い道のりの間に愛が消えた。・・・消えたのかな。わからない。心配なのは愛? わからない。だけど・・・愛しい? 手をつなぎたい? 一緒に眠りたい? 抱かれたい? 「許せないのは愛してないからだよ」って友だちに言われた。あんなに愛してたのに。楽しい思い出がいっぱいあるのに。甘くて切ない思い出もいっぱいあるのに。だけど前を見れば何もない。一緒に築きなおしたい将来が見えない。もう一度抱かれたいと思わない。彼のために目指したこの道、やっと手に入れたタイトルは、一人で生きてくための糧になる。 何も言えなかった。この先のことも。インターンが終わったことも。なんとなく言いたくなかった。もうすぐ終わるって嘘ついた。あさって卒業式があることだけ言った。 午前中にコンタクトレンズを取りに行って、それから車の登録に行く。渋滞の高速をのろのろ走って、登録の手続きに2時間待たされる。うちに帰ったのは夕方だった。留守電のランプがついていた。メッセージは入ってなかった。あの人だ。電話くれたんだ。・・・。 ベッドでうたた寝してると、電話が鳴った。 「着いたよー。お昼、電話したんだよ。」 「うん、そうだと思った。ごめんね、出かけてた。どう?」 「ずっとコーフンしてる。」 飛行機が揺れて缶かんでくるぶしを切ったって言ってた。送ってあげたコーリングカードが使えなくて必死で探して買ったって言ってた。仕事のことも聞きたかったけど、もう行かなきゃいけないって言った。声がとっても元気だった。よかった。嬉しい。 「明日かあさって、時間見つけてまた電話していい?」 「いいよ。待ってる。」 「うん、待ってて。いろいろ話す。」 「いっぱい話せるの?」 「いっぱいかはわかんないけど。頑張る。」 かわいいなと思った。「頑張る」はあの人の口癖。何でも頑張る。遊びも仕事もつらいときも楽しいときも。いつでもちゃんと頑張れる人。 ーわたしのおかげなんかじゃないよ。あなたが自分で掴んだ夢の一歩。才能がなければ、それに自分が頑張んなきゃ、こんなふうには認められないじゃない。 愛おしい。愛おしい。愛おしい。ずっと見守っていたい。ずっと応援したい。・・・そばにいたい。手をつなぎたい。一緒に眠りたい。そして・・・抱かれたい。 あなたに抱かれたい。あなたを抱きたい。あなたにしかいだけない気持ち。だけどどうにもならない。 -
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