お願いお願いお願い - 2001年06月13日(水) おととい、あの人の夢を見た。もう何ヶ月も見てなかった。やっと夢に出て来てくれた。なのに、顔が見られなかった。夢の画面いっぱいがコンピューターの大きなモニターで、ほかにはなんにもなかったから。夢の中でひとりキーボードを叩いてるわたし。カチャカチャ音は響いてたけど、キーボードが夢の画面にあったのかどうか、覚えてない。 あの人とチャットでHしてる夢だった。 あの人がいっぱいいやらしいことを書いてくる。モニターにどんどん生まれてくるエッチな言葉。わたしもそれに答えて一生懸命打ってる。頭がふわふわして、夢なのに体が疼いてた。夢のなかではちゃんとわかってたけど、覚えてるのはあの人の最後の言葉だけ。 ーもう我慢できなくなった? 電話しておいでよ。 ものすごくどきどきしながら電話を探してたら、目がさめた。 昨日電話で話したら、あの人は思いっきり声をあげて笑った。 「もう、悲しかったよー。せっかく久しぶりのあなたの夢なのに、顔も見れないしさ。」 前に一度、したことがある。「淋しいから、ときどきチャットHするんだ」。あの人が、最近ヒマな時何やってんの? なんて聞いたときに、くやしいからそう答えた。その頃は病院の仕事と課題と毎週ある試験の勉強に追われて、ヒマな時間なんかなかった。時間を探してはあの人に電話してたのに。わたしのちっちゃな嘘に、あの人は拗ねた。 「ほかの男とするんだったら、僕としてよ。ね、ね、今度しよ。」 「うそ。してくれるの?」 「するする。いつする?」 そう言って決めた日と時間に、わたしが電話する。ふたりが知ってるあのチャットのサイトに一緒に行く。電話で話しながら、キーを打つ。はじめはバカみたいにふざけっこしてたけど、だんだんあの人がキワドイことを書いてくる。「電話、切るよ」。そう言われて声がなくなると、すごく心細くなって緊張した。モニターの文字を見てるしかない。エッチな返事をする。なんだか笑っちゃいそうなのに、たかぶってくる。あの人がいやらしい言葉を言わせようとする。 ーやだ。言えないよ。 ーなんで? 言ってごらん。 ーだめ。やだやだやだやだ。言えない〜。やだ よ〜。 ガラにもなく照れちゃって、だめ。 ーしょうがないなあ。ちょっと電話してきな? 声を聞いたら、なんかほっとした。 「だめじゃん。恥ずかしくなったのか。」 「恥ずかしいよー。ほかの男となら、いくらでもエッチなこと書けるのに。」 「僕には言えないの?」 「言えない。だめ。やだやだやだやだ。会う前は平気でなんでも書いたのにね。なんでだろ。」 「まあ、いいよ。今日は勘弁してあげるよ。」 その時のことを思い出して、あの人が言った。 「ひとりコーフンしたまま取り残されて、欲情したオッサン状態だったよ。」 「うそ。知らなかった。笑ってからかってたじゃん。」 「違うよー。あのあと電話でしようと思ってたのにぃ。」 「ほんとー?」 なんだ、わたしだってしたかったよ、ほんとは。電話でしたかったー。 「ねえ、じゃあ今度して。」 「恥ずかしがらない?」 「恥ずかしがらないよ。絶対。だから、ね? お願いお願いお願い。」 だって、ずっと前に、してくれるって言ったじゃない。もう一回聞かせてよ、どきどきして体が震える言葉。せめてせめてせめて電話で、もう一度アノトキの素敵なあなたに会わせて。抱いて抱いて。声でいいから抱きしめて。 あのね、あなたに言わなかったけどね、夢から目覚めて自分でしちゃったよ。 -
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