You're lucky - 2001年06月15日(金) luckyって言葉が好きじゃなかった。 「Youユre lucky」って言われると、そこに妬みや皮肉が混ざってるようで嬉しくなかった。日本語のラッキーみたいに「得したね」「救われたよね」って言われてるよう気がしてた。 今日、lucky のほんとの意味がわかったよ。 あなたの CD 聴いてたの。電車に乗ってるあいだも、歩いてるあいだも、ずっと。バッグの中に Sugar Ray も Duran Duran も weezer も入れてたのに、ずうっとあなたの CD だけ聴き続けてた。 去年の今頃もそうだった。わたしは日本にいた。日本に着いて何日目だったのかな。あの人と初めて会って、3日経ってた。会えないあいだはずっとずっと聴いてた。寝るときも離さないで、聴いてた。会える日も、待ち合わせの場所までずっと聴いてた。 帰りの飛行機の中でも、ここにアパートを探しに来たときも、引っ越してくる飛行機の中でも、ここで暮らし始めてからも、いつもいつも聴いてた。いつからか、辛くて聴けなくなった。それでもお守りみたいに、あの人の CD を机の上に立てて置いてた。 なつかしいなんて、思わなかったよ。初めて聴いたときと一緒だった。幸せが胸いっぱいに広がるようじゃなくて、温かい雨にずぶ濡れになって立ってたら遠くの方の空で雲が切れて細い光りが差すのを見たような、そんな気持ちになった。そしてわたしは光に吸い込まれた。初めて聴いたときと、おんなじ。 でもね、新しいこと発見したんだ。間違いなくあなたの指から生まれた音楽だって。あなたをもっと知ったから、わかったこと。 街の違う顔を見つけた。また輝いてる人たちに出会った。道を尋ねた警備員のおじさんが優しかった。プラットフォームの番号を教えてくれたおばあさんがあったかかった。電車の窓に差しこむ夕方の陽がまぶしかった。 目を閉じて、聞こえてくる音にあの人を重ねてたら、涙がにじんだ。悲しいからじゃなくて、切ないからじゃなくて、何だろう。ビーチではしゃぎまわるあの娘が時々立ち止まってこっちを振り返ったときみたいだった。 苦しむために、悲しむために、あなたと出会ったんじゃない。あなたを待つために、ここにひとりでいるんじゃない。 わたしね、「Youユre lucky」って自分に言ってあげた。 あなたがそこにいてくれること。あなたの音楽に会えたこと。わたしがこの街で生きてること。 どこかであの娘がウィンクしたような気がしたよ。 -
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