天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

眠る時間もないくらい? - 2001年06月16日(土)

少し遅れてやって来たあの人が言った。
「ごめん。今彼女につかまってるんだ。就職の相談って。1時間くらい、時間潰しててくれる?」
わたしは、反射的に笑った。不意をつかれた自分の気持ちの対処に困ったら、うふっと笑ってしまう変なくせがある。だけど微笑ましいと思ったような気もする、あの人と彼女のこと。

知らない街をひとりで歩いてみた。DPEのあるお店を見つけて、2日前にふざけて撮ったあの人の寝起きの顔のフィルムを現像に出した。所要時間が15分だったか、30分だったか、とにかくあの人が戻ってくるまでにはちゃんとプリントが出来上がることになってた。

出来上がった写真を手にしたら時間を持て余して、言われた喫茶店に行った。1時間と少し経ってからあの人が現れた。「彼女、大丈夫なの?」。そう言ったら、人差し指でわたしの頭をこつんと叩いて、「気にしないの」ってあの人は微笑んだ。くちびるの両端をきゅっとあげて上目使いをする、ちょっとセクシーなあの人の微笑み。不意をつかれて、下を向いて、またうふっと笑ってしまった。顔をあげたら、心配そうなあの人の顔があった。妬いてると思ったの? ほんとに彼女のことが心配だったのに。でも、2日前の別れ際に「会わなくても、わたしが日本にいるあいだはわたしがあなたの彼女だからね」なんて甘えたのはわたし。

あの人は、夢中になって音楽のことや自分の夢の話をしてた。「なんでだろ。きみには何でも話したいよ」。そう言ったあと、素早く辺りを見回すと、まわりの人の目を盗んでテーブル越しに短いキスをくれた。そして、「こんなとこでキスしたのなんか初めて」って照れた。

「彼女とはそんなに会ってないんだ。時間があんまり合わないし。」
「きみと会うことのほうが、ずっと楽しみだったよ。」

あの人がそんなふうに言うから、彼女のことなんて平気だった。手を繋いで歩いたわけじゃないけど、ときどきわたしの髪に触れたり、頭を自分の肩に抱き寄せたりする。「彼女に見られたら、どうすんの?」って聞いたら「親戚のおねえちゃんが外国から遊びに来てるって言う」なんて、少しも悪びれない。「外国にいる親戚のおねえちゃん」が通用するほど、彼女はこの人のことまだよく知らないんだ。そう思った。つき合ってまだ4ヶ月って言ってたものね。

「4ヶ月っていったら、一番楽しいときなんじゃないの、ふつう?」
「そうなのかな。でも僕はほかにやりたいことがいっぱいあるし。」
なんだか不思議な気がしたけど、そんな、ちょっとクールな関係なんだと思った。


それなのに、それから一年もたたないうちに、あの人は結婚を決めた。いつのまに、どうやって、それほど気持ちが深くなったの?

きっと何かを見つけたんだ。彼女のなかに、あなたのこころを動かすもの。結婚したいって思うほどに。いつ? なんで? なんで・・・?

だめ。だめ。だめ。もう、もとの「ぐじゃぐじゃ」に戻ってる。一年前の今日を思い出したら、きっと声が聞けなくてもだいじょうぶって思ったのに。思い出してたら、気がつかなかったことに気がついてしまった。昨日のわたしはどこに行ったの?


昨日も「頑張って」の Eカードを送った。バカバカしすぎておかしいアメリカンジョークのカード。ピックアップ通知は来ない。

どこにいるの? どこにいるの? 誰といるの? 
「元気が出るように、笑えるジョーク送ってよ」って言ったくせに。
眠る時間もないくらい忙しくなるって言ったくせに。






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