天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

わからない - 2001年06月24日(日)

腕の中にあの苦しそうなあの娘がいた。過去じゃなくて現在だった。戻って来た彼女がいた。逝く前の、続きだった。わたしの腕に頭をあずけたまま、あの娘は苦しそうに吐いた。ごぼごぼと白いミルクが小さな口から溢れ出た。全部吐き出したら、「おなかがすいた」とつぶやいた。

「なんか食べさせてやろうよ。せっかく戻ってきてくれたんだから」と夫が言った。
「どうしよう? 材料がないよ。あのトマトソースがない。普通のトマトソースでいいかな?」

彼女には特別な食事を作っていた。でもトマトソースなんか使ってなかったのに。

突然場面が変わった。映画のロケだった。
わたしはあの娘を抱いたまま、黒山の見物人の最前列にいた。撮影の見物人じゃなくて、エキストラをやっていた。あの娘がむずがるから、撮影は何度も取り直しになって、誰かがとうとうわたしとあの娘を後ろの方へ押しやろうとした。すると監督がそばにやってきて、片手を伸ばしてあの娘の頭を抱くと、あの娘のほっぺにキスしてくれた。それが嬉しかった。「ありがとう」。何度もお礼を言った。

また場面が変わった。あの娘は元気だった。黒いベルベットのドレスがかわいかった。あの頃のように、わたしのあとをついてまわって、足にまとわりついてた。抱き上げたら、「ママ大好き」と言ってわたしの首に抱きついた。せっかく来てくれたのに、わたしと夫は出かけなくちゃならなかった。いつもの友だちを呼んであの娘を見てもらうことにした。そんなことはしたことがなかったのに、夢の中には「いつもの友だち」がいた。あの娘をおいて出かけることなんかもしたことなかったのに。「あたしは大丈夫よ。ママも大丈夫だよね。ママは幸せだよね」。あの娘はそう言って、チビたちと戯れた。夫と一緒に帰りの飛行機の搭乗ゲートに並んでたら、友だちがやってきて言った。「あの娘は帰ったよ」。胸がはりさけそうだった。

隣りの列で女の子が誰かに何かをおねだりしているのが聞こえた。聞き慣れた声の返事が聞こえた。「結婚してからね」。あの人の声だった。わたしはそっちを見ないように、一生懸命列の前方を見ていた。ガラスの向こうにあの娘がいた。こっちを見て笑ってた。

目がさめた。あの人の声が耳に残ってた。

わたしは思い出した。ここにひとりで来たときに、聞こえたあの娘の声。

「大丈夫よ、ママ。そんなことはちっぽけなことよ。わたしは自分がどれほど幸せに生きたかって、今はとてもよくわかるの。病気であんなに苦しかったこともなんでもなかったと思えるくらいに。ママの人生も、いろんな苦しいことがあったとしても、とてもとても幸せな人生なんだよ。わたしが守ってあげるから心配しないで。ママは幸せなんだよ。」

わからなくなった。わたしは幸せなの? なんでこんなに苦しいの? それはなんでもないことなの? わたしはどうすればいいの? 昨日の夢で、何を言おうとしたの? 何が言いたかったの? あの人を連れ戻しに来たわけじゃないの? 

あの娘に会いたい。


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